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2008-10-02 17:18
(連載)政治と選挙が絡んで進行する米国の金融危機(1)
池尾愛子
早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
アメリカ政府が9月20日(土)に、金融機関がかかえる不良資産を最大7000億ドル(約75兆円)まで公的資金で買い取る金融安定化法案を議会に提出して以来、それまで静かにしていた経済学者たちが一斉に声をあげ始めた。「借手救済には反対」「借入ローンは返済されるべき」「規制には反対」ということでは一致していたようだが、まずは法案に対する抗議や反対の声があがり、そして「何もしないよりはまし」という意見を含めて支持の声が発表され、意見は分かれているように見える。彼らの多くは以前から、杜撰な貸出政策や金融市場の悲惨な状況を多少なりとも知っていたと推測される。それに対して、政府、大学、金融機関、メディア以外で働く有権者たちはほとんど知らなかったようで、「アメリカ経済のファンダメンタルは大丈夫」と繰り返していたポールソン財務長官やバーナンキ連銀議長への不信感が先行することになった。
政府や議会の指導部は超党派で合意に達したとされていたのであるが、29日(月)午後下院で法案は否決された。賛成投票を促すペロシ下院議長(民主党)のあからさまな規制支持発言を不愉快に感じて反対票を投じたとする共和党議員もいた。その夕方、民主党オバマ大統領候補を支援する経済学者チームのサマーズ氏(ハーバード大学)が支持を、オバマ氏に辛いとされるクルーグマン氏(プリンストン大学)も「良い法案ではないが、何もしないよりよい」との理由で支持を、TV局CNNのニュース番組でそれぞれ表明した。10月1日(水)夜には、共和党大統領候補マケイン氏、民主党大統領候補オバマ氏、民主党副大統領候補バイデン氏が、ワシントンDCに参集して修正案に賛成票を投じ、法案は上院で可決された。そして、3日(金)の下院での審議を待つことになった。(つづく)
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