これらの指摘について検証してみます。まず、産経が指摘する移民の定義は、国連が「出生あるいは市民権のある国の外に1年以上いる人」としていることから、今回の政策は「移民枠拡大ではないか」という点です。実は移民の定義は明白にはないのです。国連のそれはマイナーな定義で、普遍性がありません。事実、1年といえば「ワーキングホリデイや留学生も移民になるのか」ということになります。移民というのは、移民本人の意思及び受け入れ側(国家)によるそれの承認という二つの条件が整った上で、本人が希望すればずっと住めるという前提があってこそ成立するのではないでしょうか?ちなみに英英辞典を見ると『Webster』も『Oxford』にも「Permanent(永住)」という言葉が入っています。例えばカナダにおいて、駐在員などの就労ビザ取得者は「居住者(Resident)」に過ぎず、逆立ちしても移民とは言いません。英語では「一時的滞在の許可(Temporary Work Permit)」に過ぎないのです。これはアメリカも同様です。この就労ビザは通常1~2年ごとに更新を要求され、更新できるかはその時々の政府の「移民政策の方針次第」ということになります。よって、ビザが出ず、帰国する人も存在します。また、カナダ国内の業種ごとの労働市場をみて、就労ビザが出たり、出なかったりします。例えば、昔は日本人の美容師はビザが出たのですが、今はかなり厳しくなりましたし、一店舗一人などと制限が付くようになりました。つまり、就労に関するビザは、政府のさじ加減次第で増やしたり減らしたりできる実に都合の良いものなのです。