その結果、ヤーミン政権との友好関係に基づき、中国は2014年9月に合意された、2億ドルを投じた「中国・モルディブ友好橋」の建設をはじめとするインフラ協力を加速。これと並行して、自由貿易協定(FTA)の締結による貿易・投資も活発化してきました。さらに、2013年の段階で、年間120万人にのぼる観光客のうち中国人は33万人にのぼりました。ただし、中国の急速な進出が膨大な資金流入をもたらし、結果的にその国の政府要人の汚職を加速させがちなことは、多くの国でみられることです。モルディブでもヤーミン政権にはもともと汚職の噂が絶えませんでしたが、中国の進出はその汚職体質を強化したとみられます。モルディブ・インデペンデント紙によると、中国とモルディブの両政府の協議で決定された、「中国・モルディブ友好橋」を含む橋脚建設に関わる中国企業のなかには、フィリピンの道路改修工事などで詐欺行為を働いたとして世界銀行のブラックリストに掲載されているCCCC Second Harbor Engineering社も含まれています。報道を受け、ヤーミン政権は企業選定が「透明で公正なもの」と強調しましたが、これは中国だけでなく政府に対する反感をも招き、それが結果的に政府をさらに強権化させる一因になったといえるでしょう。(つづく)