貿易問題が注目されるたびに、サミュエルソンは国際収支データと自身の要素価格均等化定理を参照する講演を行ってきたようだ。彼の1964年論文はイギリスの『経済学・統計学雑誌』に発表された。彼は「米ドルが高すぎることが、アメリカの貿易赤字を生み出している」と論じた。そして、「米ドルが高すぎるので、アメリカ企業が他の先進国に海外直接投資(FDI)を行なっている、しかも、最新鋭の生産技術と経営管理方法が投入されている」と指摘した。「他の先進国」とはヨーロッパ諸国を指す。そして、「文字通り、私たちは雇用(job)を輸出してきたのである」とした。日本では後に「産業の空洞化」(直訳 the hollowing out of an industry)とみなされる現象である。英語圏では、「雇用の輸出」(job exportation)と呼ばれる。