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2014-12-21 00:45
(連載2)STAP細胞、シェーン事件とあまりに酷似
中村 仁
元全国紙記者
ノーベル賞受賞者の野依理事長は、退職する女性研究員について「前向きに新しい人生を歩まれることを期待する」というコメントを出しました。そんなことより、不正を生みやすい科学界の体質に警鐘をならしてほしかったのです。
科学研究に関心を持つ人から、あるメールを受け取りました。たまたま、「論文捏造」(村松秀著、2006年、中公新書ラクレ)という本を読んだといいます。「2000年ころ、アメリカの名門、ベル研究所で起きた、高温超電導の分野での論文捏造事件を題材にした本です。有名なシェーン事件です。細部にわたってSTAP細胞事件があまりにも酷似しており、驚いた」というのです。
「登場人物や組織の名前を変えれば、そのままストーリーが通用する。ノーベル賞間違いなしと言えるほどの大発見。追試には誰も成功しない。周囲では疑いが持ち上がる。斯界の権威が共同研究者であるため、自分たちの追試技術が未熟であるためかとの考えも捨てきれない。そのうちグラフの使いまわしが発覚し、それをきっかけに、杜撰な研究態度(研究ノートの不備、データやサンプルが残っていないなど)が分った」。
「次に、間違ったグラフを掲載してしまったという本人の言い訳に疑いの目が向けられた。調査委員会の決定により、結局、数々の論文は取り消され、本人は解雇された」。「一方、研究のリーダー(斯界の権威で論文の共著者)でも、一流とされる配下の研究者には、生データやノートを見せろとかは言えない」、「共著者は論文の内容には自分が全責任を負う立場にはないとの態度をとる」、「ベルの研究所は当時、地盤が沈下し、挽回のため、この世紀の大発見を売り出すべく躍起となっていた」、「今はひっそりと暮らすこの研究者は、論文の不備は認めているものの、不思議にも、その研究結果の正しさについては、今もって信じている様子だ」。(つづく)
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