「日・ASEAN対話：東アジア共同体への展望と地域協力」の報告書を拝見しましたが、ASEANにおける先進諸国（シンガポール、タイ、マレーシアなど６カ国）とCLMV諸国（カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム４カ国）の間の経済格差の問題がほとんど議論されていないのを残念に思いました。

　東アジア共同体構築に向けて様々な協力の枠組みが企画され、また実施されていますが、ASEAN加盟10カ国の間の経済格差をどうするかという問題は、最も重要な課題だと思います。この問題を解決しないまま貿易や投資の自由化だけを進めれば、格差はいっそう広がります。それは、ASEAN自体の連携や一体化の脚を引っ張るだけでなく、地域全体の政治的、経済的な不安定性を高める恐れがあります。

　日本も東アジア共同体構想を推進して行くのであれば、このASEANが抱える経済格差問題を放置しておくべきではありません。経済格差是正のためには、日本はASEANとの包括的経済連携の検討を進め、とくにCLMV諸国は農業に比較優位をもつので、できるだけ早く日本の市場を一部なりともかれらのために開放することを真剣に検討すべきです。