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2011-03-16 09:32
(連載)何故米国では気候変動対策が進まないのか?(7)
西村 六善
元地球環境問題担当大使
ここまで、米国で起きている大きな新しいうねり、クルーグマンが「急進右派の革命」と定義づけているものと、その中で気候変動の問題がどのように扱われているかを分析してきた。2010年11月の中間選挙で共和党や茶会が優勢になったことから判断し、且つクルーグマンの予見が今後も正しいとするならば、米国は、弱肉強食を更に好み、ひどく政府嫌いになり、世界に関心を向けるよりも、自分のことに関心を向ける度合いが、一層強くなると云えるだろう。
米国は、左右に振り子が揺れる国だ。しかし、今のところ逆振への契機が見えないところが問題だ。このこと自体が、世界にとっても、日本にとっても、重要な問題を投げかけている。広く国際協調、安全保障、貧困や環境などの地球規模の問題等に、この傾向がどう影響するのか?温暖化と云う狭い分野に止まらないで、広い視点から米国を研究し直す必要があるのではないか?
気候変動を含め地球的問題に関心が薄まるのも必至だし、温暖化の科学に対する否定的姿勢も隆盛になる可能性がある。寧ろ、これだけ気候変動否定派の巨大な世論操作マシーンが驀進している割には、国際協力推進派は「ソコソコ」頑張っている方だとも云える。しかし、深刻な山場は2012年の大統領選挙だろう。急進右派が勝利するなら、温暖化防止の国際協力で米国の存在は非常に希薄になり、殆んど無に近くなろう。そのこと自体圧倒的に深刻だが、これに温暖化の科学への攻撃が強大化すると、温暖化防止への国際協力は、名状しがたい大混乱に陥るだろう。結果として、温暖化防止への国際努力は危殆に瀕する危険がある。
このように米国の急進右派の「革命」は、地球環境にとって深刻な問題を投げかけている。気候変動国際交渉に米国代表が旅費の予算が無い為に参加できない、と云ったことが起き兼ねない。取るに足らない小さな事件に見えるが、その意味するところは巨大だ。温暖化防止の為に残された時間は少ないだけに、地球の将来にとって由々しき展望だ。なお、本稿の内容は、著者の個人的見解をあらわすものである。(おわり)
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