この矛盾を考えると、環境問題を含めた正しいエネルギー政策への取り組みが急務であると言える。もちろん、日本のような高齢化社会で人口が減少する傾向にある国を除いて、世界的な人口増加の傾向性、各国政府の効率的及び公正な食品の配分や助成金の問題など、複雑な要素が食品値段の高騰化の原因になる場合もある。最近、エセノール生産の是非について様々な研究が行われるようになった。スタンフォード大学のマーク・ジェイコブソン教授は、アメリカ人の癌発生率と死亡率の関係についてエセノールとガソリンの比較研究を行い、2007年の『Environmental Science and Technology』誌に、その研究結果を発表している。それによれば、教授は「エセノールが人間の健康に及ぼす害は、ガソリンとほぼ同じであるか、場合によってエセノールの方がはるかに有害である」と報告している。
1960年にベネズエラ、サウジアラビア、クエート、イラン、イラクなどの主要原油生産国は、原油生産と価格に関して産油国の立場を強化するため、OPECを創設した。1970年12月、OPECは大幅に原油価格を引き上げたが、その後1973年にアラブ・イスラエル戦争が勃発すると、原油価格は4倍に跳ね上がり、第1次オイル・ショックとなった。この暴騰については、「イスラエルを支持したアメリカに対する制裁である」との意見もある。1979年の第2次オイル・ショックの原因の一つは、イスラム革命によりイランのシャーが打倒された政変だとも言われている。第3次オイル・ショックは、1990年にイラクがクエートを侵略した時期に起きている。翌年1月に始まった湾岸戦争も、原油市場を支配するための戦争であったことを、中東問題に関する定期刊行誌『Middle East Journal』誌などは示唆している。 (つづく)