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2010-05-18 00:00
(連載)オバマ大統領のクリーン・エネルギー開発政策について(2)
島 M.ゆうこ
エッセイスト
我々の食生活も、燃料資源問題に無関係ではない。近年、特に豊かな国では肉の需要が高くなっている現状がある。肉の消費が増えれば増えるほど、家畜に与える穀物の需要が上がるため、穀物を原料とする食品の値段も上がる結果になる。もちろん、アメリカが最も肉製品を多く消費する国であるが、近年では日本や中国でも肉の需要が増えた事実は否めない。急速に伸びる肉の消費は、結果的に家畜に与えるとうもろこしや大豆などの消費も増やすことになるため、穀物の値段が近年高騰している。従って、エセノール生産の増加や、高い肉製品の消費が食品の値段を高騰させ、貧しい人々を飢餓状態に追いやる要因の一端になっている。
この矛盾を考えると、環境問題を含めた正しいエネルギー政策への取り組みが急務であると言える。もちろん、日本のような高齢化社会で人口が減少する傾向にある国を除いて、世界的な人口増加の傾向性、各国政府の効率的及び公正な食品の配分や助成金の問題など、複雑な要素が食品値段の高騰化の原因になる場合もある。最近、エセノール生産の是非について様々な研究が行われるようになった。スタンフォード大学のマーク・ジェイコブソン教授は、アメリカ人の癌発生率と死亡率の関係についてエセノールとガソリンの比較研究を行い、2007年の『Environmental Science and Technology』誌に、その研究結果を発表している。それによれば、教授は「エセノールが人間の健康に及ぼす害は、ガソリンとほぼ同じであるか、場合によってエセノールの方がはるかに有害である」と報告している。
また、2009年には、ミネソタ大学も「とうもろこしを原料にしたエセノールは、経費が高いばかりでなく、ガソリンより有毒である」との趣旨の研究を発表している。このような研究がもっと多くの科学者によって実証された場合、国内の海底原油掘削は更に拡大することが考えられる。オバマ大統領が述べたように、今回の原油流出事故のような事故の再発を防ぐためには、事前に厳重な安全性基準の制定が急務になってくる。アメリカは、国内原油掘削の他にも、歴史的に輸入原油に深く依存している。例えば、アメリカが使用する原油の50%は輸入原油であり、中東から輸入する原油に強く依存している。
1960年にベネズエラ、サウジアラビア、クエート、イラン、イラクなどの主要原油生産国は、原油生産と価格に関して産油国の立場を強化するため、OPECを創設した。1970年12月、OPECは大幅に原油価格を引き上げたが、その後1973年にアラブ・イスラエル戦争が勃発すると、原油価格は4倍に跳ね上がり、第1次オイル・ショックとなった。この暴騰については、「イスラエルを支持したアメリカに対する制裁である」との意見もある。1979年の第2次オイル・ショックの原因の一つは、イスラム革命によりイランのシャーが打倒された政変だとも言われている。第3次オイル・ショックは、1990年にイラクがクエートを侵略した時期に起きている。翌年1月に始まった湾岸戦争も、原油市場を支配するための戦争であったことを、中東問題に関する定期刊行誌『Middle East Journal』誌などは示唆している。 (つづく)
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