地方分権のためには、権限のみならず財源も与えよというのが常識ですが、「権限、財源、道路の３点セット」が地方の自立には必要だ、というのが私の持論です。国家の防衛に、国土防災に、代替道路を含む道路網の整備と充実は、喫緊の課題です。言いかえれば、国家を守るためのセーフティ・ネット、国土を守るためのセーフティ・ネットであり、国民に万一の時の「安心」を保障するのが、整備された道路網です。

　これまでの道路政策には、道路とは何かという哲学と、道路の効用を国民経済の中でどのように位置づけて、産業・農業・定住政策とリンクさせるか、というビジョンが欠落しているように見えます。アメリカ、ドイツ、イギリスでは国土防衛と防災の観点から、基幹道路はすべて国の費用で建設・管理し、平時は一般に無料開放されている、という事実も参考にすべきことでしょう。

　また、農業は中国の低いコストとの競争という、新たな大きな試練に立たされています。わが国の農家の労働コストや生産コストを下げよという議論の前に、農村から東京、大阪などの大消費地へ運んでゆくための流通コストと時間コストの引き下げを実現して、少しでも中国との競争力をつけることが必要ではないでしょうか。こうした地方の東京に対するハンディキャップ をなくす「内内」価格差是正と、外国とのハンディキャップを縮める「内外」価格差の是正を通じて、国際競争力を向上させるべきだと思います。

　そのためにも、アメリカ、ドイツ、イギリスなみに高速料金を無料にし、国費で建設を前倒しで完成させるべきでしょう。アメリカの２５分の１の国土面積で、アメリカの半分のＧＤＰ（経済規模）をこれからも維持しようと思うなら、単位面積あたり、アメリカの 国土の１２．５倍の生産性を日本の国土が持つように、道路網の充実が、とりわけ日本のような地形には必要だと思います。（つづく）