なお、カルヴォ会長(アルゼンチン出身、国際機関経験者)は、国際金融統合の進むなか、IMF介入の問題を指摘しながら、「世界中央銀行(Global Central Bank)」を創設する持論を大会初日に披露した。世界中央銀行の提案は思想史上、新しいものではない。ただここでは、統計的直観力と分析力を生かしたカルヴォ氏自身の研究が、IMFの提供するデータベースに大きく依存していることは指摘しておきたい。近時の国際機関は、経済社会データベース生成に大きな役割を果たしており、有効なデータベースの構築には研究と経験が欠かせないはずである。ヨーロッパでは経済通貨同盟(EMU)や欧州連合(EU)の経験があるが、米州大陸での地域金融協力を構想しにくいのは、アメリカのプレゼンスが余りに大きすぎるからである。現状を打開するためには、米州地域を越えたアーキテクチャ構築の必要性が感じられるのではないだろうか。他地域から詳細な提案があれば耳を傾け、地域間の差異も視野に入れて、東アジア経済に有効な金融アーキテクチャ構築を提案する工夫が必要なように思われる。(つづく)