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2026-08-26 15:18

(連載1)カナダ アメリカ関税戦争

岡本 裕明 海外事業経営者
 アメリカとカナダの関税交渉の決裂により、アメリカは500品目以上に及ぶカナダ製品に50%の関税を課し始めました。アメリカ側の関税徴収の根拠法は1930年のスムート ホーリー法であります。このスムート ホーリー法は関税に関してたぶん世の中で最も悪名高きものの一つで、当時関税を課したアメリカ経済はドツボにハマり、世界貿易の縮小を招いたこともあり、現在でも有効ではあるけれど、実質的に墓場に葬った法律であります。トランプ氏はそれを掘り起こし、パンドラの箱を開いてしまったわけです。

 スムート ホーリー法は大学の経済学部の人ならば経済学史あたりで出てくる内容ですが、一般学生ぐらいでは深堀しないと思います。たまたま私はゼミで両大戦間経済が主たる研究内容だったのでそれが出てきたのと社会人になってからも時折経済の本に出てくるので史上最悪の関税だという認識はずっと持っていました。1930年当時の話をちょっとだけ振り返るとアメリカが法律で定め、フーバー大統領がこれに基づき40-60%の関税をカナダを含む各国にかけるとカナダは猛反発し、カナダの貿易は旧英国連邦との取引に切り替え、米加の貿易関係が急激に希薄になります。これでアメリカの輸出産業は壊滅的打撃を受け、国内輸入物価価格は急上昇し、アメリカの失業率は25%に達する致命的な不況に陥ったのです。

 もちろん、当時の大不況がスムート ホーリー法だけが原因でこのような事態になったとは言いません。大戦間経済は非常に複雑な背景があり、特に第一次大戦で大負債を負ったドイツ経済の展開が重要なエレメントになるなど複合的要素を持っていますが、カナダとアメリカだけの話に絞れば当時起きた事態と現在起きている事態はウリ二つになりつつあるわけです。ではお前はどう考えるのか、と聞かれると思います。実は先ほど日本の某ワイドショーから現地コメントを生放送で、という話しが来たのですが、お断りしています。この手の話はたまに来るのですが、テレビ局はせっかちで数時間後の放送に間に合わせようと無理難題を押し付けるので嫌なのです。

 もちろん自分なりに考えていることはあります。ただし、今回のアメリカ カナダの争いはエレメントが多く、読みにくいと考えています。北米メディアはチキンゲームと称しています。先週までの関税交渉に際してカーニー首相はカナダの各州の首相に実質輸禁となっているアメリカの酒の扱いについて説得工作をしたのですが、反応が悪かったのです。しかも市民も含め「仮にアメリカ産の酒が再びカナダで買えるようになってもボイコットするよ」という声が強く、Buy Canadianの激しい動きが出てきているのです。もちろん、そんなことお構いなしの人もいますが、国民のトーンとしてはアメリカに強い嫌悪感を抱いている人がかなり増えているのは事実です。(つづく)
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