一方、コトラー氏は5つの視点のうち、「もし成長を減速させるのであれば、どの程度の速さで減速させるべきか?」という自問自答に「消費者支出が突然25%も落ちたら、その結果は直ちに有害で悲惨なものになるだろう。… 成長は、政治においても、経済においても、社会においても、疑う余地のない目標である。しかし、この目標は、資源が枯渇する世界では、最終的に災いをもたらす。だからこそ、低成長への移行がその答えになる」と述べています。これ、日本にピッタリ当てはまるのです。日本はバブル崩壊後、先進国における低成長国家として特異な状況にあります。日本の低成長の理由はここで述べきれないほどいろいろなファクターがあるわけですが、日本がアメリカのような強欲社会ではなく、全般的にフラットな社会を目指してきたことは事実であり、「脱成長」という言葉は必ずしも同意しませんが、成長より安定、安全、安心社会の構築でありました。これは一考の価値があると断言できるでしょう。文中、「Less is More」という発想を紹介しています。この考え方はジェイソン・ヒッケルという学者の2021年の著書「How degrowth will save the world」で使われている言葉で最近一部で話題になっているものです。直訳すれば「少ない方がいい」であり、対義語がmore is better です。昭和の典型で山本直純の森永エールチョコレートの「大きいことはいいことだ」のキャッチが思い出されますね。