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2022-08-04 00:05
(連載2)金融政策の「実験台」として名乗りを上げた日銀
中村 仁
元全国紙記者
日銀は目先の細々とした動向ばかり注視せず、視野をもっと広げる必要があります。異次元緩和と一体になった巨額の財政赤字を気にすることはないと、安倍元首相は言い続けてきました。そうなのでしょうか。
「財政赤字の持続可能性」も、日本の「実験」です。巨大な赤字を抱いたままの財政はいつまで持続できるのか。結果が出た段階で検証が行われる。経済が長期的な停滞期に入っている状態で、欧米発のMMT(現代貨幣理論)に依拠した結果でもある財政赤字をどう処理するのか。
財政赤字は財政論というより、経済政治学の次元の物語です。政治的圧力が財政節度を押し切る。経済の長期的な停滞が正しいのに、「経済成長すれば、再建できる」と信じ込んできた積極財政派は、主要国では日本にしか見当たらない。これも「実験」として検証に値する。数ある経済記事の中で注目したいのが米スタンフォード大のコクラン教授の指摘です。「楽観できぬインフレ対策」(日経7/14日)の寄稿で「インフレが過剰な財政政策に起因しているのは明らかだ」と。「政府の支出は安定した税収か、将来確実に得られる税収から捻出する必要がある。需要が供給というレンガの壁にぶつかっているのに、各国はできる限りのものを生産している。政府借入(国債)の増加、紙幣の印刷でそれを支えている」と。教授は「長期的な成長率はかつてに比べて半減し、米国は2000年以降、1・8%に低下している。そんな状況下で、無理に景気を刺激しても、供給の壁があるため、インフレの高進につながるだけだ」と。
経済成長率の長期的な低下を無視して、金融財政政策で成長率を引き上げようとすると、インフレを招く。今のインフレの真因は、コロナやロシアによるウクライナ侵略ではなく、この点にある。アベノミクスやMMT理論とは真逆です。日本では、国債の半分以上を日銀が保有し、マネー市場は市場機能を失っています。政権、政府に国債を好きなだけ発行させるためです。「市場機能を失った国で経済が活性化するか」も、日本の「大実験」でしょう。(おわり)
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(連載1)金融政策の「実験台」として名乗りを上げた日銀
中村 仁 2022-08-03 21:08
(連載2)金融政策の「実験台」として名乗りを上げた日銀
中村 仁 2022-08-04 00:05
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