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2022-08-03 21:08

(連載1)金融政策の「実験台」として名乗りを上げた日銀

中村 仁 元全国紙記者
 欧米を始め、世界の63か国が今年前半、インフレ抑止のために、金利を引き上げている中で、日本は大規模緩和政策の維持、金利の据え置きを決めました。円安も一時1㌦=139円に迫り、消費者物価は上昇しています。孤高の異次元緩和政策を続けていくと、日本経済はどういうことになるのか。「やってみなければ分からない。実験みたいなことに挑戦しているのだから」が日銀の本音でしょう。各国は異形の金融政策の結果を興味津々と見守っているに違いない。日本に「実験」をさせている。
 
 21日の金融政策決定会合の結論をみると、アベノミクスの操縦者である黒田総裁の発言は「日本は異形の金融政策の実験台になる」と宣言したに等しいと思います。主要国の中央銀行は慎重に熟慮を重ね、リスクを避ける。黒田総裁は熟慮の結果、リスクの多い道を選んでいるということです。日経新聞の経済教室で、青山学院大の准教授が「金融政策の効果を測る」という連載を書いています。「実験できない難しさ。金融政策では実験の手法は使えません」と主張しました。どうなのでしょうか。各国と正反対の手法をとる日本の金融政策はまさに実験といっていい。他国の金融引き締め策が失敗するのか成功するのか、日本の異次元緩和策が失敗するのか成功するのか。これほど歴然とした違いを見せつけられると、黒田総裁は果敢に「実験」に挑んでいるとしかいいようがない。無謀な「冒険」だったといわれる日が来るかもしれない。
 
 民間企業なら「実験」の失敗は倒産です。日銀の「失敗」は、さらなる円安へと進み、国債暴落、金利引き上げに追い込まれかねない。日銀は倒産するわけにはいかない。日銀と一体で、世界最大の財政膨張を続けてきた政府も倒産するわけにはいかない。「実験」の失敗のつけは、国民、企業に来る。そして政権は破綻する。このような大規模な「実験」の失敗は悲惨な結果を招きかねない。欧米主要国は日本のような超長期、超大規模な金融緩和は避けてきました。そして引き締めによるインフレ抑制策に転換しています。
 
 黒田総裁は緩和維持の理由として、「欧米の物価は8-9%、日本は2%台(6月は2・4%)にとどまっている」と指摘しました。総合物価指数ではそうでも、「食品などのモノは前年同月比で4・9%、食品は6・5%。円安、国際市況の上昇による」(日経)です。これは国民生活にとって痛い。(つづく)
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