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2021-12-08 15:43
(連載2)補正35兆円が全額国債発行、日本財政は「世界の例外」
中村 仁
元全国紙記者
MMT理論によると、財政拡大を終了する際、「インフレ率が限度を超えたなら増税すればよい」のだそうです。そんなことは日本ではできない。日本の政治は、適切なタイミングで増税できない。岸田首相は「今後、10年は消費税を引き上げない」とすでにいい、それが政治公約です。安倍元首相も消費税引き上げを選挙対策で見送りました。経済・財政理論は、現実を極めて単純化したモデルに立っています。現実はどうかというと、「増税すべき時に増税できない」「歳出を圧縮すべき時に圧縮できない」のです。財政政策を決めるのは政治で、経済理論ではない。財政はもはや政治学で扱ったほうがいいのです。経済・財政理論を研究するなら、政治学と一体で扱ってほしい。財政審にも政治学者を委員に任命すべきです。日本が世界から見て、「例外」なのは、財政に対する独立した監視機関がないことです。主要国ならどこの国でもあります。
日経の特集記事「賢い財政支出の実現」(6日)では、3人の専門家のうち、2人が独立機関の設置を提唱しています。「英国では2010年に監視機関(予算責任局)を設け、政府から独立した立場で経済と財政を分析する。08年の国際金融危機がきっかけとなった。政府の財政や経済成長の見通しは常に楽観的で、危機が起きた時に手が付けられなくなっていた」(リチャード・ヒューズ局長)。「18歳以下の子供への10万円給付、アベノマスクの一律支給はじめ、根拠やデータに基づく判断から外れる財政支出が多い。将来の財政を推計・試算する独立監視機関があるべきだ」(佐藤主光・一橋大教授)。日本は過去20年、経済成長率は1%以下です。その間の財政金融政策は、異次元金融緩和をセットにしたアベノミクスが典型です。
「経済を優先した財政政策を」といい続け、その効果がなかったから国債残高は1000兆円を超えた。しかも日銀がその半分を保有しており、そのような国は他にない。財政が悪化している各国の中でも、日本は「例外」といっていいほど異常な状態です。財政の実態をみれば、財政理論が通用しない国であることが分かる。財政学は政治学と一体でないと、研究する意味はありません。
6月に「政府に左右されない独立した監視機関を設立する超党派議員連盟」が発足し、与野党から7人が共同代表に就任しました。発起人は林芳正外相(当時参議院議員)らに期待したものの、もう雲散霧消でしょう。(つづく)
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投稿履歴
(連載1)財政に対し独立した監視機関の設立を
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中村 仁 2021-12-08 15:43
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