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2021-12-07 18:04
(連載1)補正35兆円が全額国債発行、日本財政は「世界の例外」
中村 仁
元全国紙記者
臨時国会が6日、召集され、新型コロナ対策などを盛り込んだ21年度補正予算案が主な議題です。20年度は3回の補正を組み、年間で総額175兆円、しかも今回の補正予算35兆円の財源は全額が国債発行です。主要国は増税を含めた財政健全化、金融緩和政策の正常化に向かおうとしているのに、逆コースを走る日本の政府、与党はもちろん、野党にも危機意識はほとんどありません。将来、日本経済が大混乱に陥れば、与党が陥没し、野党に政権が回ってくることを期待していると疑いたくなる。背筋が寒くなどの空恐ろしさです。「日本は例外」という空気が支配しています。窮地に陥れば、神風が吹くとでも思っているのだろうか。
「30年以内に70%の確率」と言われている大震災が起きたら、財政負担が何十兆円に上るかの試算もしていない。新型コロナのような感染症、温暖化による自然災害は「例外」どころか常態化しています。与党は政権の維持、選挙対策という視野でしか国家の金融、財政を見ていません。「日本有事」でなく、政権の維持に備えているのです。それを正当化するのが米国発のMMT(現代金融理論)、つい最近まではFTPL(物価水準の財政理論)でした。米国ではそれほど見向きにされていない理論をありがたがる「例外的な国」が日本です。
かりに目標を達成し、緊縮財政に向かうべき段階になっても、高齢化に伴って増大する社会保障費などは削れない。○○理論、△△理論はそんなことに関心を払っていません。さすがに財政制度審議会(財務相の諮問機関)は提言で、歯止めがかからない財政政策を「戦後最大の例外」と位置づけ、脱却が必要だと指摘しました。これまで聞いたことがない「戦後最大の例外」という文言には、怒りがこもっています。問題は、「何年例外を続けてきたのか」です。
その一方で政府が決めた来年度予算編成の基本方針では「経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない」を強調しました。「経済優先の財政政策を続けてきた成果」を検証しようともしていません。自民党内では、安倍氏の援護を受けた高市政調会長が旗振り役で、積極財政派は、財政赤字を積極的に容認するMMT(現代金融理論)を支持しているとのことです(読売、12/2日)。米国発のMMT理論は、主流派経済学者からは拒絶されており、「民主党の反緊縮のリベラル派」の人たちに歓迎されている(岩村充早大教授)。米国のリベラル派(左派)が信奉する理論を、日本では自民党保守派が借用するおかしさに気がつかない。(つづく)
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