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2021-12-01 21:21
(連載2)選挙買収まがいの55兆円経済対策
中村 仁
元全国紙記者
今回の経済対策をメディアは酷評しています。「国民や事業者への現金給付などで総額が膨らんだ。18歳以下の子どもへの10万円給付は、事実上所得制限がなく、事実上のバラマキだ」(読売社説、20日)。「現金給付」の前に「選挙絡みの」とすれば、もっと正確でしょう。「経済が正常化し始めている今、なぜ昨年度の40兆円をしのぐ巨額の対策が必要なのか。自公が衆院選で公約した現金給付が、十分に検討されぬまま次々に次々に盛り込まれた」(朝日社説)。後払いなら問題視されないと、与党は考えているのでしょうか。「岸田首相は『新しい資本主義』を掲げる。産業の新陳代謝や労働者の移動を促す施策を深堀りし、技術革新や生産性の向上につなげない限り、日本経済の地盤沈下は避けられない」(日経社説)。正論です。「現金給付」は衆院選の公約の後払い、来夏の参院選対策の先払いに当たるということでしょう。「経済対策だ」「コロナ対策だ」「年内に補正予算案として国会に提出する」といえば、合法的な扱いを受ける。
真水の国費30兆円が国債で賄われるとすれば、その償還(返済)は選挙権を持っていない若い子どもに大きくのしかかってきます。「子どもの名義で親が借金して子どもに現金給付し、将来、返済するのはその子どもたち」というからくりが見えてきます。今回の国債30兆円が加わると、22年度の公的債務(借金)残高はGDP比で250%に拡大する。「借金として国が発行する国債を日銀が購入・保有(資産)しているから、統合(合算)すれば、帳簿上は差し引きチャラになる」(統合政府論)という奇説を財政膨張の根拠にする人もいます。
おかしな理論です。親会社(国)の債務を子会社(日銀)に押し付け、それは子会社の資産になっているから、大丈夫というような奇説です。経営が苦しい親会社がやりがちな手です。そんな企業は倒産する。国は国家債務の見返りに何を保有しているかというと、社会保障費や今回の現金給付で多くを費消し、残りも売却できないもの(民間に売却しにくい空港、港湾、防衛施設、公道、橋)が多い。
このようなことを繰り返えさせないためにも、主要国ならどこにでもある財政状況の監視機関の設立、世襲議員の禁止、政治人材の多様化、与党を牽制できる野党の育成といった政治改革が必要なってきます。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)選挙買収まがいの55兆円経済対策
中村 仁 2021-11-30 17:36
(連載2)選挙買収まがいの55兆円経済対策
中村 仁 2021-12-01 21:21
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