国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2021-11-30 17:36

(連載1)選挙買収まがいの55兆円経済対策

中村 仁 元全国紙記者
 政府は財政支出が過去最大の55兆円となる経済対策を決めました。国費約30兆円の財源は国債で手当てする見込みです。最悪の財政状況にかかわらず、先の総選挙で与野党を問わずバラマキ合戦をした結果です。来年夏の参院選も控え、バラマキ財政に拍車がかかりました。野党が与党をけん制するどころか、所得税や消費税率の大幅引き下げなどを主張するものですから、刺激された与党は負けじと財政膨張に走りました。総選挙の期間中、茨城6区における岸田首相の応援演説会で、トラック協会の関係団体絡みで参加者に5000円の日当が支払われ、市民団体が有権者の買収に当たると告発をしました。公職選挙法違反の疑いです。
 
 一方、最大派閥の会長に就任した安倍元首相が17日、事務所を訪れた岸田首相に「経済対策では、今すぐ使える真水ベース(国による直接負担)で30兆円を上回る規模が必要だ」と要請しました(日経/20日)。岸田首相も総裁選向けに「数十兆円の経済対策」を公約していました。選挙運動の際、候補者という個人側から、有権者個人にわたるカネは買収資金として特定しやすい。選挙絡みで、国家予算という大きな財布から不特定多数にわたるカネは合法化できるということでしょうか。政治家が個人的に秘密裡に裏金を有権者に渡せば、公職選挙法違反となります。政権・与党が国民向けとして予算措置を講じれば、選挙絡みでも合法的な行為とされる。釈然としない話です。
 
 今回の経済対策は政府が閣議決定し、予算案として国会で可決され、合法的な措置となります。そうであっても、「国家資金を使った与党の選挙対策費」という性格の色が濃いと思います。経済・景気対策なのか、選挙対策なのか紛らわしい予算を歴代政権も組んできました。それがだんだん露骨になってきたような印象を受けます。
 
 安倍氏が「すぐ使える真水ベースの30兆円を」などという露骨な言い方をし、しかも「その金額を首相に伝えた」と新聞にすぐ報道されることをむしろ期待している。そのことを全く隠そうとしない。安倍氏は2014年11月、「解散表明、消費税10%への引き上げ見送り」と述べました。「見送りについて有権者の判断を総選挙で問う」とも語り、明らかに直接的な選挙利用だとの批判が聞かれました。有権者誘導型の経済・財政政策の程度がだんだん色濃くなってきています。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム