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2021-05-27 08:05
(連載2)中国が得たRCEPでのアドバンテージ
倉西 雅子
政治学者
RCEPにあって、中国は、現在6%の関税率にある電気自動車用リチウムイオン蓄電池の電極・素材の一部について、16年をかけての関税撤廃に合意しましたが、このことは、むしろ、16年という期間であれ、中国に対して特恵的な関税率を認めたことになりかねません。そして、16年もの年月があれば、中国企業は、各種自動車部品についても内製化を達成し、日本国に対しても輸出攻勢をかけてくることでしょう。あるいは、この頃には、日本国内では、既に自動車の生産拠点は消えているのかもしれません…。
一事が万事であり、自動車部品の他にも、家庭用冷蔵庫、エアコン、洗濯機、オーブン・電子レンジなどの家電製品を見ますと、むしろ、中国がこれまで10~15%の関税をかけてきたことに驚かされます。これらの製品も、全部、あるいは、部分的に11年目に関税が撤廃されるそうですが、日本のメーカーが次々と中国企業に買収され、安価な中国製家電が日本市場でシェアを広げてきた現状を見ますと、ここでも、中国は、11年間のアドバンテージを獲得したことになりましょう。
RCEPは、アジアにあって中国をメンバーとする広域的な自由貿易圏とするイメージが植え付けられてきましたが、その実態は、中国が有利となる不平等条約であるのかもしれません。しかも、中国は、RCEPを利用して、極めて巧妙に電気自動車などの先端分野にあって自国の産業を保護・育成しようとしているようにも思えるのです。
合意された関税撤廃が実現する16年後には、不利な競争条件に置かれた日本国の産業は衰退する一方で、有利なポジションを得た中国は、中華経済圏の足場固めを済ませているかもしれません。このように考えますと、日本国は、対中関係の見直しを急ぐオーストラリアと共に、RCEPからの離脱も検討すべきではないかと思うのです。(おわり)
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