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2021-03-05 12:16
(連載2)「思いやり予算」は思いやりではない
中村 仁
元全国紙記者
米側が不快に思うであろう「思いやり」が問題化してこなかったのは、「思いやり予算」という言葉にふさわしい訳語がなかったからです。米側の文書では「Host Nation Support」(HNS)になっているはずです。HNSを直訳すれば「接受国の支援費」か「支援受け入れ国の協力費」でしょう。実態に即していえば「駐留米軍経費の分担金」ですか。そうであるにもかかわらず、「思いやり予算」が使われてきたのは、前例踏襲による。間違った使い方をした表現に新聞が疑問を挟まず、翌年も、そのまた翌年も使い、それが40年も続いたということです。
朝日新聞は「思いやり予算」に違和感を持っているに違いありません。18日の記事では「在日米軍駐留経費(HNS、思いやり予算)を巡る交渉」と、「HNS」を付記しています。さらに「政府はこれまでも、HNSについて、『現在、適切に分担されている』『我が国の厳しい財政状況を踏まえて適切に対応したい』と答弁し、さらなる負担増は必要ないとの立場を示唆してきた」と、主語に「HNS」を使っています。
読売はワシントン発で「在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を巡る交渉」という解説雑報を載せました。せっかく、ワシントンに駐在しているのですから「HNSと思いやり予算」という論点に触れるべきです。この記者は「おもいやり」とは、妙な表現だと思わなかったのか。
この日本側負担の2000億円の中身は基地従業員の労務費、光熱水費、諸施設の建設費などです。駐留軍経費はそのほか、基地周辺対策費、提供財産借り上げ費などもあり、総額で5800億円(16年度)のぼります。わざわざ経費分類を複雑にしてあるような気がしてなりません。国防費、防衛費の実態が外からみて、よく分からないようにしておくための悪知恵なのかもしれません。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)「思いやり予算」は思いやりではない
中村 仁 2021-03-04 18:42
(連載2)「思いやり予算」は思いやりではない
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米軍基地支援は「思いやり」との錯覚が続く新聞
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