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2021-03-04 18:42
(連載1)「思いやり予算」は思いやりではない
中村 仁
元全国紙記者
米軍駐留経費の大幅増額を同盟国に要求していたトランプ米大統領が去り、バイデン氏に代わって現実的な対話路線に転換することが期待されています。その第1弾が在日米軍駐留経費の扱いです。2月18日の新聞は一斉にこの問題を取り上げており、「3月末の期限切れ前に本格的な協議(5年にわたる特別協定の改定)を終えることができないので、21年度(初年度)は過去5年間の平均である2000億円とし、それ以降は改めて協議して決める」と、合意したとのことです。
各紙の記事の見出しは「思いやり予算、仕切り直し/大幅負担増の回避が焦点に」(朝日)、「思いやり予算2017億円で合意/22年度以降、増額要求も」(読売)、「米軍駐留費協定/1年延長」(日経)などです。この「思いやり予算」という表現はつくづく妙な言葉遣いだと、私は思ってきました。
まるで米軍に対する「思いやり」で基地経費を日本が分担しているような印象を与えます。緊張が増す国際政治、軍事情勢の下で、米軍が日本に駐留基地を置いていることで日米安保条約が機能しています。日本側の負担は国防分担金か駐留軍経費分担金と呼ぶのが正しく、「思いやりで」ではない。
なんで基地分担金を「思いやり」と呼ぶのか。「アバウトの金丸」と言われた大ざっぱな人物が当時(1978年)の防衛庁長官で、米国の要求に応じて基地協力費を増額した際、「思いやりの立場で対処しよう」と説明しました。「思いやり」という意味不明の予算用語の登場です。日米安保体制では、「米国にとっての戦略的根拠地(駐留米軍)を日本列島に置くことを認める」、「同時に米軍基地は日本を防衛する役割を持つ」という2つの機能が表裏一体になっています。ですから「思いやり」という情緒的な表現を使うことは間違いです。(つづく)
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中村 仁 2021-03-04 18:42
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