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2020-11-04 10:59
(連載2)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁
元全国紙記者
安倍政権では「一億総活躍」だの、「全世代型社会保障」だの、「希望出生率1・8」だの、スローガンが乱発されました。実現が難しくなると、検証せずに、看板だけを掛けかえました。それを見てきた菅首相は、安倍氏との違いを際出せようと、腐心したに違いありません。その結果、「日本経済の構造を変えるには、小粒すぎる。個別すぎて規制改革の全体像がみえない。グランドデザインがない。国際的にも通じる理念が示されていない」という識者らからの指摘が聞かれます。演説の締めくくりにある「国民のため働く内閣」は、当然すぎて物足りません。国際的にも、新政権にはメッセージ性がないみられます。
私はまず「財政金融政策が泥沼につかっており、その出口をどうするか」を聞きたかった。カネのかかる政策を次々に並べるなら、その財源をどう手当てするのかが問題なのに、菅演説は全く触れない。先進国の債務は第二次世界大戦時を越え、史上最悪(GDP比で125%)。その中でも群を抜いて最悪なのは日本(同200%)です。中央銀行はこれまた金融の超緩和で、出口がない。「コロナ不況というのに、株価はバブル再燃の気配」という矛盾をどう考えるのか。「今はコロナ対策を先行せざるを得ない」というのなら、例えば「財政規律のために、コロナ対応の支出を特別勘定にして、別勘定にする必要がある」(佐藤・一橋大教授)などの工夫が必要です。
財政学者からは「国会に行財政を監視する独立の監視機関を作る」という提案が聞かれます。先進国の集まりであるOECD加盟国で、こうした機関がないのは日本だけという。短冊ばかりで総合的な視点がないのです。中間層が疲弊し、所得・資産格差が拡大しています。日本ばかりでなく、世界共通の悩みで、それが経済の停滞を招いています。その中間層の復活が最重要だという問題意識が感じられません。
日本もようやく「50年に温室効果ガス排出をゼロ」の目標を掲げました。実際には、実現不可能とされます。それでも50年目標はあるほうがまだよい。問題はそこに至るには、産業、社会構造の転換が必要なのに、それこそ、その各論がない。梶山経済産業相は「年末までに実行計画を策定する」と、明言しました。年末までに策定できるほど、簡単な作業ではない。「短冊型」の取り組みで手に負える話ではありません。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁 2020-11-03 15:05
(連載2)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁 2020-11-04 10:59
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