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2020-11-03 15:05
(連載1)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁
元全国紙記者
菅新首相の所信表明演説がありました。私が「おやっ」と思ったのは「特定のスピーチライターを置かず、首相の関心の高いテーマを各省から集めて、官房副長官が作成した」という記事(読売)です。だから「個別政策を短い行数で並べる形になった。菅首相は一つ一つの仕事に真面目に取り組む姿勢を示すことが重要だと、周囲に指示した」(読売)そうです。グランドデザインがないのはそのためです。
主要国の政治指導者で、スピーチライターを置いていない指導者はいないと言われる時代です。国民にインパクトを与える政治理念、国家目標を分かりやすい表現で伝えるには、草稿を書くプロが求められています。菅首相は「そんな者はいらない」でずっと通すのでしょうか。安倍首相当時は、雑誌記者、外務省報道官、大学教授などの経歴を持つ民間人(谷口智彦氏)をスピーチライターとして起用しました。施政方針演説、東京五輪の招致演説、国連演説などを手掛けました。「Buy My Abenomics」(経済政策)、「Under Control」(福島原発事故)などのフレーズを考え出したそうです。民主党政権も、各首相はスピーチライターを使っていました。鳩山首相が腹案もなく「普天間基地は国外に移転」と口走りました。基地移転は迷走状態に陥るなどして、民主党政権はつぶれました。ですからスピーチライターがいても、それを生せるかどうかは首相本人次第です。
スピーチライターを重視しているのが米大統領でしょう。ケネディ、オバマ氏の大統領就任演説を起草したのは著名なライターで、格調高い演説といわれました。傍若無人の発言を続けるトランプ氏にもいます。菅氏の場合は、国内向けだけならば、実務型演説で通せるのかもしれません。でもどうでしょうか。外交・安全保障、温暖化対策(グリーン社会の実現)などは、日本の発信力を強めるチャンスですから、今回のように「短冊束ねたような」表現で片づけるのはもったいない。
今回の「短冊型」演説では、段落の結語に「・・・まいります」が10何か所以上も使われました。ついで「・・進めます」、さらに二つを結びつけた「・・進めてまいります」が目立ちます。単調すぎる。菅首相の口ぐせである「自助・共助・公助」は、英訳したらどうなるか。英語にしても国際的なメッセージになるようなスピーチを書くには、スピーチライターは不可欠な補佐役でしょう。(つづく)
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投稿履歴
(連載1)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁 2020-11-03 15:05
(連載2)スピーチライター不在の菅首相
中村 仁 2020-11-04 10:59
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