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2020-08-28 15:21
(連載2)コロナで見えた地方への権限分配の課題
緒方 林太郎
元衆議院議員
あと、都道府県と市町村との関係も色々な不備が出て来ています。特に都道府県と保健所政令市との対立が深刻化している所は気になります(なお、ほぼすべての都道府県に保健所政令市があります)。典型的なのは東京都でして、都内の31保健所の内、都知事が管轄しているのは僅か6保健所。マスコミ経由で見ていても、幾つかの区の保健所と都との関係がギクシャクしている事は容易に分かります。また、詳細は控えますが、我が福岡県でもこの件は相当深刻な課題を惹起しており、医療提供体制に影響しています。また、教育の分野でも、4-5月の時点で、幾つかの県では県立学校と市町村立学校との休校措置の期間がずれかかった事がありました。福岡県では、県と市町村で一旦ずれた意思決定がなされ、「お姉ちゃんが県立高校、弟が市立中学校。弟は登校するけど、お姉ちゃんが登校しない時期が出る。ムチャクチャ厄介だ。」というお話は幾つか頂きました(最終的には緊急事態が発動されたため、このずれは顕在化しませんでしたが)。
上記の通り、法律上は対策本部長は都道府県知事です。しかし、具体的な対策になればなる程、平素の権限配分の中で都道府県知事が全く口を挟めない分野が出て来ています。その典型的なものが「(保健所政令市の)保健所」と「教育委員会(特に政令指定都市)」です。恐らくかなり多くの知事は「自分は対策本部長だとされているけど、それに見合う法律上の権限調整はなされていない。」という不満を持っているでしょう。これは法作成時に、全国知事会から指摘されていたのですが取り込めなかったものです。この解決法は色々と考えられますが、私は「保健所や教育委員会に関する協議体を法定して、そのTOR(付託事項)を政令で決める。」というのが良いと思っています。ともかく「よくお話してください」という事です。(なお、この観点から、法の理念に基づいて知事に権限を集約させる方針を徹底しているように見えるのは大阪府です。マスコミ経由で見ているだけですが、新型インフルエンザ等対策特別措置法通りにやっているように見えます。大阪府は2009年新型インフルエンザの際、府と市で休校期間がずれた経験があり、それを踏まえてやっているのでしょう。だからこそ、法に基づかない国の介入に不満を持つのだろうと思います。)
ただし、一つ「?」となったのは、先般、全国知事会が「緊急事態は都道府県単位ではなく、基礎自治体単位でやってほしい。」と要望していた事です。都道府県単位で出されると負担が重い事があるようです。しかし、そんな事をしたら、都道府県の存在は「下請け」になります。例えば、政令指定都市(+保健所政令市)である北九州市だけで緊急事態が出されたら、福岡県に求められるのは「うちの街でやる事をきちんとバックアップしてほしい。」にしかなりません。うちの街はすべてのやり取りを直接国とやるでしょうから、対策本部長としての都道府県知事の位置付けは極限まで下がります。そして、各都道府県全域のリソースをフル活用しながら、広域行政でCOVID-19を押さえ込んでいくという理念そのものがダメになっていきます。「全国知事会、変な事言っているよな。」という気になりました。
私は医療の専門家ではありませんし、現職の国会議員でもありませんので、知り得る情報には相当な限界があります。なので、自分が公開情報で知り得るものをベースに、特に行政機構上の権限関係で気になる事を書きました。上記の内、かなりの部分は法改正が伴うものです。全国知事会、指定都市市長会等はこういった権限関係の整理を待っていると思うのですけどね。(おわり)
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(連載1)コロナで見えた地方への権限分配の課題
緒方 林太郎 2020-08-27 22:21
(連載2)コロナで見えた地方への権限分配の課題
緒方 林太郎 2020-08-28 15:21
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