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2019-12-20 12:30
(連載1)経済停滞を生む中間層の疲弊
中村 仁
元全国紙記者
経済停滞の原因を考えるうえで、注目すべき重要な指摘がいくつかありました。要約して紹介しますと、「グローバル化は所得格差の拡大を通じて経済停滞を招き、副作用が増大している」「ゼロ金利の長期化は経済の新陳代謝を弱める(不効率な経済の温存)」です。グローバル化やゼロ金利を軸とする経済政策に無批判では、深まる低迷をさらに深めることになりかねないと思います。
格差拡大は野党勢力が最重視すべき絶好の材料です。米大統領選でも野党が重要な争点に仕立てています。それに比べて日本の野党は「桜見の会」の追及に熱中し、多くの中間層、低所得層が苦しんでいる実態の真相を掘り下げようとしていないのです。社会、経済、政治にとって、最も重要であるはずの問題に野党は目を向けない。取り組むべき問題の優先順位が分っていない。これでは有権者の共感を引きつけられません。
まず、日経新聞の朝刊1面の連載(11/30)で「滞る再分配/安定を損なう」「所得と消費に広がる格差」という記事が載りました。学者、研究者らの指摘として、「一部の人が使いきれない富を手にし、経済全体で有効需要(消費)の低下を招いている」と、しています。「所得上位1%(富裕層のこと)の富が中間層40%を抜いたのは90年代。富の偏在に拍車がかかり、上位0.1%(超富裕層)の富が50年に、中間層40%に匹敵するまで膨らむ」。上位1%どころではなく、わずか0.1%の人たちが巨大な富を所有し、富める者はさらに富む循環になっているのです。
このことは米国の著名な投資家であるジョージ・ソロス氏ら19人の大富豪が昨年6月、大統領宛に書簡を送り、「超富裕層に課税を」「米国は道徳、倫理、経済的に、我々の資産へ課税(富裕税)する責任がある」と、びっくりするような要求をしました。それが「経済成長の促進、公平な機会創出などにつながる」と。ソロス氏は「米国では保有資産の上位0.1%が下位90%の人たちと同等の富を所有している」とも、指摘しました。中間層以下は疲弊し、消費する力は衰退している。その結果が経済低迷、社会不安を招いている。課税を強化しても、経済活力が回復し、社会も安定すれば、彼らの不利益にはならないということでしょう。(つづく)
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