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2019-10-10 12:14
(連載2)トランプの対イラン強硬姿勢の裏
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
また、トランプ大統領は、アフガニスタンのタリバンと和平交渉を行っていた。トランプ大統領の行動は、興味深いことに、ツイッターなどの文字で表された強気な姿勢とは全く逆だということだ。中東に駐留するアメリカ軍は「威圧」のためにプレゼンスを誇示することはあっても、いざというときに実際に戦うという選択肢を実のところ持っていないということが最近では明らかになってきている。
トランプ大統領は、明らかに、片方で「イランが悪い」と強硬姿勢を示しながら、片方で「戦いたくはない」という弱気な本音を見え隠れさせている。そして、その実、日本の安倍首相に「対イランの融和工作の使者」を任せている。アメリカは、自分の同盟国でありながらイランと友好的な外交を展開する日本を嗜めるのではなく、その特殊性に目をつけて日本のイラン外交の展開に関心を払っているのである。
なぜこのようになるのであろうか。イラン政府とイランのイスラム革命防衛隊の関係に注目したい。革命防衛隊は、イスラム革命を成功させるためにパーレビ国王を排除したホメイニ師が組織した部隊であり、シャリーアをもとにした改革を謳い、シーア派の布教とシーア派による政治を目指している。それがイエメンのフーシ派の問題に繋がっており、フーシ派のイエメンでの闘争、サウジアラビアとの対立となって現れているのである。サウジアラビアは、フーシ派による攻撃をそのまま「イランによる」と主張しているが、イラン政府と革命防衛隊との意思疎通が完全な上意下達にはなっておらず、革命防衛隊がイラン政府の指揮に基づかない国際的なテロ集団としての側面を持つと仮定すれば、革命防衛隊の行いをイラン政府に当然に帰責させるというのは必ずしも外交上有益な選択とは言えない。アメリカがイラン政府とイラン革命防衛隊を分離して扱うことによる外交的解決の可能性を探っているとすれば、アメリカの強硬姿勢にもかかわらずイラン独自外交に安倍首相が意欲的に取り組んでいられるのも得心が行くというものだ。
我々には簡単には把握しづらい中東情勢にあって、イランやサウジアラビア周辺の多数当事者間の複雑な関係はしっかりとフォローしていかなければ理解はなかなか及ばないものだ。まあ、この事件に関してはまだまだ進行中であるので、「途中解説」というような位置づけで考えてみていただければよいのではないか。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)トランプの対イラン強硬姿勢の裏
宇田川 敬介 2019-10-09 20:28
(連載2)トランプの対イラン強硬姿勢の裏
宇田川 敬介 2019-10-10 12:14
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