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2019-07-23 11:38
(連載2)国際法からみた韓国「徴用工判決」の問題点
加藤 成一
元弁護士
しかし、下記の理由により、日韓請求権協定の対象に「徴用工」個人の慰謝料請求権が含まれていることは明白である。(1)日韓両国の交渉において、韓国側から「徴用工」個人の慰謝料請求権だけを対象外とする特段の意思表示も合意も一切なかった。(2)かえって、判決も認める通り、1961年5月10日の日韓予備会談で、韓国側は「徴用工」の精神的肉体的苦痛に対する補償(慰謝料)を日本側に要求している。(3)さらに、同年12月15日の日韓予備会談でも、韓国側は「徴用工」の上記被害補償として日本側に3憶6400万ドルの支払いを要求している。(4)のみならず、2005年の韓国民官共同委員会の公式文書で、韓国政府は無償3億ドルが「徴用工」の賠償請求権を勘案したものと認めている。
(5)廬武鉉政権を始め歴代の韓国政府は、日韓請求権協定により「徴用工」の賠償問題が解決されたことを認め、同協定に基づき不十分とはいえ「徴用工」に対する補償を行っている。(6)判決も「日韓請求権協定により、韓国国民の日本国及び日本国民に対する個人請求権も包括的に解決されたとする見解が韓国国内で広く受け入れられてきた」事実を認めているが、この認識は韓国政府、韓国裁判所、韓国国民において長年にわたり共有されてきた。(7)さらに付け加えれば、「徴用工」個人の請求権は、韓国であれ、中国であれ、「戦時中の劣悪な労働環境による精神的肉体的苦痛を理由とする慰謝料請求権」がほとんどすべてなのが実態であり、上記日本最高裁判例の事案も同じである。(8)上記(2)及び(3)に照らせば、判決のいう「不法な植民地支配や反人道的不法行為」の主張も、当然交渉において既に韓国側から提起されていたと考えられる。
上記(1)~(8)の客観的事実関係に照らせば、日韓請求権協定の対象に「徴用工」個人の慰謝料請求権が含まれていることは余りにも明白である。そうすると、上記日本最高裁判例の通り、「徴用工」個人の請求権は消滅していないとしても、上記現代実定国際法上の重要原則である「法的安定性」及び「信義誠実の原則」に照らしても、外交的保護権及び訴権は消滅したと解するのが相当である。よって、日本政府および日本企業には、「徴用工」に対して一切の国際法上並びに民法上の損害賠償責任は存在しない。すべて1965年の日韓請求権協定に基づき合計8億ドル(当時の韓国国家予算の2倍超)の供与を日本政府から受けた韓国政府の全責任において「徴用工問題」を解決すべき国際法上の義務と責任がある。
なお、韓国政府は「三権分立」を理由に「徴用工判決」を放置しているが、韓国政府が国家及び国民を代表して日韓基本条約及び日韓請求権協定を締結した以上は、韓国政府は「条約法に関するウィーン条約」26条(条約の順守履行義務)及び27条(国内法を理由に条約の不履行を正当化できない)の趣旨に照らし、行政府として日韓請求権協定を遵守し誠実に履行すべき国際法上の義務と責任がある。よって、これを履行しない韓国政府及びこれを認めない韓国最高裁「徴用工判決」は明らかな国際法違反であり、その違法性は甚だしい。上記27条の「国内法」を「徴用工判決」に当てはめればより明確になる。(おわり)
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