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2019-07-22 15:57
(連載1)国際法からみた韓国「徴用工判決」の問題点
加藤 成一
元弁護士
2018年10月30日の韓国大法院(最高裁)によるいわゆる「徴用工判決」は、同種事案に関する2007年4月27日の日本最高裁判例(最高裁第二小法廷判決。民集61・3・1188)と比較すれば、その国際法違反の性質が一段と明白になる。上記の日本最高裁判例は、「第二次世界大戦中に日本に強制連行された元中国人労働者が、日本企業の下で強制労働させられ、安全配慮義務違反などの債務不履行等に基づき、日本企業に損害賠償を請求した事案」に関するものだが、同判決は、「日中共同声明5項によって個人請求権は消滅しないが、裁判上請求する権利(訴権)は消滅した」と判示し、原告の元中国人労働者の請求を棄却した。
請求棄却の具体的判決理由は、「日中共同声明5項では、中国政府は日本国に対する戦争賠償の請求を放棄しているが、個人請求権を含め、すべての請求権を相互に放棄したサンフランシスコ平和条約の原則(14条B、19条A)に照らせば、上記5項は戦争賠償のみならず、すべての請求権の処理を含むと解すべきである。そのように解さなければ、折角平和条約を締結しても、戦争遂行中に生じた種々の請求権に関する諸問題を事後的個別的な民事裁判上の権利行使で解決せざるを得なくなり、双方の国家国民に対して、将来予測困難な過大な負担を負わせ混乱を生じる恐れがある。したがって、日中共同声明5項は個人請求権を実体的に消滅させるものではないが、当該請求権に基づき裁判上訴求する権能を消滅させると解するのが相当である」というものである。
この解釈は、以下に述べる通り、韓国「徴用工判決」とは正反対である。これは、現代の実定国際法上の重要原則である「法的安定性」(法による秩序維持)及び「信義誠実の原則」(他国の信頼保護)を重視する極めて正当な法解釈と言えよう。国際法上の「一事不再理の原則」(一度決まれば蒸し返えしを許さない)にも通じる。「徴用工問題」に関して、日本政府はこの最高裁判例と同じ立場に立ち、日韓請求権協定により「徴用工」個人の請求権は当然には消滅しないが、外交的保護権(国民が受けた損害につき国家が相手国の責任を追及する権利)や訴権(裁判上の請求権)は消滅したとしている。国際法上も極めて正当な見解であると言えよう。
これに反して、韓国「徴用工判決」は、現代実定国際法上の重要原則である「法的安定性」及び「信義誠実の原則」を完全に無視し、すべての請求権の相互放棄を宣言したサンフランシスコ平和条約の原則、並びに「徴用工」個人の慰謝料請求権を含む一切の請求権問題の完全且つ最終的解決を相互に確認した日韓請求権協定にも反する国際法違反の極めて違法な判決である。「徴用工判決」の多数意見はこうした批判を巧妙に回避するため、「『徴用工』個人の慰謝料請求権は、日本の不法な植民地支配による反人道的不法行為によるものであるから、1965年の日韓請求権協定の対象外である」などという、現在の韓国世論に迎合し、法を逸脱した超法規的な主張をしている。(つづく)
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