「一帯一路」で日中が協力する第三国として、東南アジア、中東、アフリカの国が報道されている。しかし、「一帯一路」がインフラ投資の対象国にもたらしている過剰な債務負担に世界で警鐘が鳴らされている。今年4月12日には、IMFのラガルド専務理事が、「一帯一路」によるインフラ投資はフリーランチではない、と警告した。その前月には、アメリカのシンクタンク「世界開発センター(CGD)」が、「一帯一路」参加国の債務状況についての調査結果を公表し、債務返済が難しい23カ国を指摘していた。また、中国政府は南南協力を通じて途上国におけるSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献すると表明しているものの、SDGsの思想的背景である「人権・民主主義・グッドガヴァナンス」と「一帯一路」が整合しているとは言い難い。さらに、「一帯一路」の債務問題は、資源が豊富な国や地政学的要地にある国々だけの問題ではない。中国自身の積み上がった巨額の債務問題=「中国の債務の長城(China’s Great Wall of Debt)」も看過できない問題である。「一帯一路」による「債務の罠」と「中国の債務の長城」への警戒が世界で高まるなか、日本政府は「一帯一路」での第三国協力を進めようとしている。果たして、第三国における日中協力は、日本にとって、国際関係のパラダイムにおける「Win-Win(双方が望ましい結果を得る)」の関係になるのだろうか。それとも、「Lose-Win(相手国の利益・幸福のために自国を踏み台にする)」になるのだろうか。