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2016-11-25 14:14
(連載2)米大統領選挙トランプ氏の勝因
倉西 雅子
政治学者
一方、今日のグローバル企業は、労働法による規制はあるものの、被雇用者に対する保護義務は殆ど負っていません。経営上、自らの利益にマイナスと判断された場合には、既存の従業員を解雇し、外国から新たに低賃金の移民を雇用することもできますし、自国より有利な製造地があれば、工場を移転させることも簡単です。封建領主のように、土地にも縛られていないのですから。
企業にとっては、グローバル化は利益の最大化には極めて有利ですが、被雇用者の側からしますと、突然、荒れ野に放り出されるようなものです。中世にあって荘園を追放された領民が最早生きてゆくことができないように、職を失うことは、如何なる人にとりましても死活問題です。グローバル化のさらなる推進は、現在失業中ではなくとも、将来を考慮すればリスクの限りない増大を意味します。しかも、外国人移民の増加は、国家や社会そのものの変質を伴います。
こうした危機感を感じた人々が、封建時代には凡そ存在していなかった国家の政府による国民保護機能を思い起こし、トランプ氏に保護機能の回復を期待して一票を投じたことは想像に難くはありません。否、いたく合理的な判断であったとも考えられます。
大統領選挙の結果を予測できなかったマスメディアは、統計的に世論を読み間違えたというよりも、グローバル化の影の部分に“見て見ぬふり”をしたからなのではないでしょうか。(おわり)
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(連載1)米大統領選挙トランプ氏の勝因
倉西 雅子 2016-11-24 16:41
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倉西 雅子 2016-11-25 14:14
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