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2016-11-07 17:15

(連載1)東南アジアに於ける米国の存在感について

真田 幸光  大学教員
 東南アジアには、「米国との一定の距離を置く動き」が見られ始めているものと思います。スハルト色が弱くなり、軍人たちの影響力が弱まる中、登場したインドネシアのジョコ大統領は、インドネシアにかつて存在した、現在は非合法的存在とされる「共産党」の事実上の復活を意識した動きを少しずつ示しているのではないかと思われる中、経済面でのメリットが高いと言うことを前面に押し出しながら中国本土との関係を強化しており、象徴的な言動としては、AIIB設立の際には、直ぐに、「これからは中国本土が主導するAIIBの時代であり、日米が主導するADBの時代ではない」との主旨のコメントを明言した大統領でもあります。

 また、フィリピンのドゥテルテ大統領も、訪中した際に、「これからは米国ではなく中国本土との関係をより重要視したい」との主旨の発言をし、米国政府を困惑させるような言動を行っています。もともと華僑系の人物でもあり、統制国家的国家運営を意識することから、フィリピンが「米国の犬」的存在になることを嫌う中、また中国本土からの経済支援を背景にして、「南シナ海問題は一旦棚上げにする」かもしれないような言動を続けており、明らかに、これまでのフィリピン政府とは異なる立ち位置に移動している様子が見られます。

 また、まだはっきりとはせぬものの、威厳あるプミポン国王の後任となる皇太子も中国本土と一定の関係を持ち、政治の世界もタクシン派の台頭を想定すれば、相対的にはタイも中国本土寄りに動く可能性はあると見ておかなくてはならないと思います。

 一方、東南アジアにも深く、静かに潜行し始めたイスラム原理主義の動きは、「米国のこの地域に於ける影響力の低下に向けた動きを拡大してくる可能性がある」とも思われ、様々な角度から見て、「米国のプレゼンス低下の可能性」が高まるのではないかと危惧されます。(つづく)
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