越境企業(多国籍企業)の歴史は古く、イギリスとオランダの東インド会社の例がよく知られている。それに対して越境企業の組織的研究は比較的新しく、ブラジルとコロンビアの共同提案による国連での決議の結果として1961年に開始された。その後、国連と傘下の機関を軸に、越境企業による海外直接投資(FDI)と技術移転の問題に焦点をおいて国際的な研究が展開され、夥しい成果を生み出してきた。Tagi Sagafi-Nejad の『国連と越境企業』(The UN and Transnational Corporations、2008)は、その歴史をたどるもので、 副題が示唆するように、越境企業の行動規範に関する議論からグローバル・コンパクトの成立に至るまでが描かれている。