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2016-05-06 00:00
(連載1)国連と越境企業研究
池尾 愛子
早稲田大学教授
越境企業(多国籍企業)の歴史は古く、イギリスとオランダの東インド会社の例がよく知られている。それに対して越境企業の組織的研究は比較的新しく、ブラジルとコロンビアの共同提案による国連での決議の結果として1961年に開始された。その後、国連と傘下の機関を軸に、越境企業による海外直接投資(FDI)と技術移転の問題に焦点をおいて国際的な研究が展開され、夥しい成果を生み出してきた。Tagi Sagafi-Nejad の『国連と越境企業』(The UN and Transnational Corporations、2008)は、その歴史をたどるもので、 副題が示唆するように、越境企業の行動規範に関する議論からグローバル・コンパクトの成立に至るまでが描かれている。
かつて「南北対立」と呼ばれていた問題は、越境企業とそのFDI受入国との摩擦に起因していた。経済的機会を見出して自由に活動したい越境企業と、国内への様々な悪影響を最小化して流入するFDIから恩恵を引き出したい受入国の思惑が交錯していたのである。越境企業のFDIはホストである途上国に深刻な影響を及ぼしうる一方で、その経済の発展・成長にも貢献しうるからである。もっとも1960-70年代には、FDIに対する各国の見方が大きく異なっており、FDI受入れを歓迎した国々として、イギリスと東南アジア諸国の一部が挙げられている。
1970年代前半に賢人会議(公的部門から9人、研究者6人、公的・民間企業から5人)が組織され、越境企業とFDI受入国の双方からの聴取りを実施した。1974年の同報告書により、年内にニューヨークの国連本部に越境企業委員会と越境企業センター(UNCTC)が設立され、更に関係者からの聴取りと精力的な研究が進められた。1993年にUNCTCの活動は、ジュネーブの国連貿易開発会議会(UNCTAD)に投資・技術・企業開発部を作って移管された。
越境企業とUNCTADが「ヤヌスの顔をもつ」という表現が何度か登場する。後段には、「グローバル化はヤヌスの顔をもつ」という科白も登場する。ヤヌスはローマ神話に登場する双面の守護神である。グローバル化は、越境企業のFDI、つまり技術移転によって進行してきたことが何度か主張される。もちろん、移転すべき技術の進歩のインパクトも忘れてはならないし、技術進歩を生み出しうる環境の整備も大切なはずである。(つづく)
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