第一に、監督の周防氏は映画「Shall we ダンス?」で既に高い国際的評価を得ており、本映画も海外での上映が予想されることから、今後、日本の国際的なイメージの形成に少なからぬ影響を与えることは明らかである。それを看過してよいとは思えない。
第二に、本映画は、はからずも日本男性(周防監督)の「猥褻行為に対する鈍感さ」を露呈している。「Shall we ダンス?」の主人公も中年男性であったが、本作品も典型的な日本男性の視点で描かれている。したがって、今回もごく普通の日本男性に起こり得る身近な事件として、「痴漢冤罪」をとりあげたのだろうが、そんな冤罪が「起こり得る」と安易に錯覚すること自体が、大問題である。刑事裁判の問題点を指摘したいなら、猥褻事件である必要はなかったはずだ。海外の観客が日本の観客のように安穏と本映画の主旨を理解するとは思えない。小笠原投稿にあるような日本の刑事裁判制度に対する国際的な偏見を助長するばかりでなく、ただでさえ良くない日本男性の国際的イメージ(失礼!)をさらに貶める可能性がある。