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2015-07-30 10:46
(連載4)安保法制の政治的意味合い
三浦 瑠麗
国際政治学者
安保法制を推進する保守的な政治勢力には、戦後長きにわたって日陰に追いやられてきたという感覚があります。戦後の日本社会は、自らの自画像を守るためにそこからの逸脱に対して厳しく対処してきました。戦前的なるものの排除の中で、世界規模では常識的と認識されている、現実的な安全保障政策までもが排除の対象とされました。そのような主張を展開する者は、踏絵を迫られ、社会的に排除されてきたのです。
冷戦が終わり、長い不況に苦しみ、政権交代とその挫折を経て、政権を奪還した自民党で権力の中枢に身を置いたのは、そのような体験を共有する勢力でした。3年前の自民党の総裁選において決選投票に進んだ安倍総理も石破大臣も、そのような政治勢力を象徴するリーダーです。厳しさを増す国際環境の変化も、彼らが志向する政策変更を正当化するものでした。それに対して、国民も継続して高い支持を与えました。
自民党の一部には、リベラル勢力に対して「倍返し」したいという誘因が燻っています。かつての自民党であれば日の目を見ることは無かっただろうと思われる方も、出張っています。それでも、自民党は戦後政治の伝統にのっとり、抑制的な案を出してきたと思います。安保法制のきっかけとなった安保法制懇の提言を踏まえれば、もっと踏み込んだ政策変更も想定されたはずです。しかし、実際の政府案は、いわゆる新3要件を通じて殆ど使うことが想定し得ないものとなりました。
「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合とは、ほぼ確実に個別的自衛権の発動が許容される事態です。政府と自民党は、安保法制を通じて一種の政治象徴性を勝ち取ったに過ぎないのです。実を捨てて名をとったとも言えるかもしれません。(つづく)
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