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2015-07-02 16:24
(連載1)集団的自衛権が行使できても米艦防護が違法となる場合がある
桜井 宏之
軍事問題研究会代表
集団的自衛権を巡る議論の中で、これを容認しないと、不意に攻撃を受けた米艦を自衛艦が武力を行使して守ることができないので、それで良いのかという主張があります。これについては専門家でも誤解されている方が多いので、一言申し上げたいと存じます。
日本が既に個別的自衛権を発動し、米国がこれに呼応して集団的自衛権を行使している場合は、米艦を攻撃する相手は日本にとっても敵ですので、集団的自衛権が認められていなくとも反撃が可能です。このあたりの法理については、「『憲法第9条 特に、自衛隊のイラク派遣並びに集団的安全保障及び集団的自衛権』に関する基礎的資料」(2004年2月 衆議院憲法調査会事務局)が分かり易く解説しています(衆議院ホームページからアクセスできます)。
その一方で、集団的自衛権が容認されていたとしても反撃が認められない場合があります。それは、米艦に対する攻撃が、武力攻撃に至らないような武力の行使による侵害の場合です。なお武力攻撃とは「一国に対する他国の組織的・計画的な武力行使」(防衛学会編「国防用語辞典」)を言います。武力攻撃にまでに至らない武力の行使(それに伴う侵害)について、集団的自衛権に関する先例的判決として著名な国際司法裁判所のニカラグア事件判決は、第三国による対抗措置は認められないと判示しています。従いまして、米艦に対する攻撃が組織的・計画的ではない場合に、自衛艦が反撃すると国際法違反に問われる可能性があります。
これに関連して集団的自衛権が発動されなかったと考えられるのが、2010年11月に起きた延坪島砲撃事件です。これは、韓国が軍事境界線として設定した北方限界線に隣接した延坪島で、韓国軍が海上射撃訓練を実施中に、同島に対して北朝鮮が対岸から突如砲撃を開始した事件です。北朝鮮は約1時間に約170発の砲撃をしましたが、この砲撃の間、在韓米軍は一切行動を起こしていません。なお今回政府が提出した安保関連法案に基づいて米艦を守るために自衛艦が反撃した場合、国際法違反に問われる可能性があります。(つづく)
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