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2015-06-22 10:42
(連載6)安保法制:不思議の国の潮目を読む
三浦 瑠麗
国際政治学者
潮目が本当に変わったとするならば、安倍政権の答弁の不手際が誤解を招いたという側面も大きいでしょう。政権が、有事に際してフリーハンドを確保したいという姿勢をとったのに対し、野党は明確な歯止めを引き出すべく細かい質問を続けました。国会で意見をぶつけ合う過程で、より良い方案へと修練していくというもありますから、それが健全な場合もあります。それでも、石油の禁輸を通じて国民が餓死/凍死する事態や、米艦船に邦人が乗っている事態を、全部ひっくるめて存立危機事態としたことでいかにも場当たり的な印象を与えてしまった。
現政権については、一部の閣僚や首相のとりまきにはいろいろ言いたいことも多いし、力不足の向きもいるようです。過去に集団的自衛権行使が改憲なしには許されないと強調してきた中谷防衛大臣に対して、野党は血の匂いを嗅ぎつけたサメのように攻め立てており、どうもグラついているように見える。他の政策分野における非リベラル性についても注文があるし、自民党2012年改憲草案に体現された国家観、社会観、憲法観にはとてもついていけないというか、正直、怒りさえ覚えます。
しかし、それでも安保法制は日本の安全保障のために求められていると思います。平和と自由と豊かさを引き続き守っていくためには必要だと思うからです。そしてそれが、政権の不手際とは関係のない本質だからです。一度政権を担い、安全保障においてリアリズムを標榜する民主党議員はそうした声を上げるべきでしょう。維新の党についても同じことが言えます。政局を追い求める気持ちはわかるけれども、安全保障は政局でもてあそぶべきものではないし、そのような姿勢では本格的に政権を奪還するつもりがないとみなされても仕方がありません。
長期政権を見込んでいる安倍政権には、法案と刺し違える気など毛頭ないと思うけれど、局面を打開するタイミングではあるでしょう。その際、ぜひ安全保障環境の変化と同盟の持続可能性について、これまでよりも率直な言葉で語ってほしいと思います。今般の変更によって、現場のリスクは高まるという当たり前の事実を認めたうえで、抑止にとどまらない更なる外交の必要性を認め、その両輪があってこそ国民の安全も高まるということを丁寧に主張することです。
集団的自衛権は国際的には必要とされており、国防を現実的なコストで行い、日米同盟を維持するために必要であると認めたとしても、国民は理解するだろうと思います。むしろやってはいけないことは国民の理解力を低く見ることです。安保法制をめぐる展開は、最後は強行採決ということになるでしょう。政権にはそれまでにぜひ説明を尽くしてもらいたいと思います。(おわり)
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