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2014-09-25 10:29
(連載2)スコットランド独立否決は英国の地位低下を止めない
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
2013年には、シリアのアサド政権が自国民に化学兵器を使用したことに対する武力制裁への承認を、英政府に対して議会が与えなかった。このことは、英国の、国際規範の守護者としての意思と能力に大きな疑問符をつけた。さらに、2014年6月には、中国の李克強首相の訪英に際し、英王室のプロトコルに反して、中国側によるエリザベス女王との謁見の要求に屈した。中国との経済関係を重視したためである。これが、トーリー党(王党)の流れを組む保守党政権下の出来事であるのは、何とも皮肉なことである。そして、対中関係では、中国が、1997年の香港返還の際の、50年間香港の自由選挙を保障するとの約束を反古にして、2017年の選挙からは中国当局の認める人物しか立候補出来ないとしたことに対して、英政府は抗議らしい抗議をしていない。これでは、自由主義、民主主義の守護者としての価値も、大国としての威信も捨てたに等しい。
総じて、英国は、内向きになっていると言ってよいであろう。スコットランド独立をめぐる住民投票に際し、キャメロン首相は、拙速にスコットランドへの強大な権限移譲を約束したが、これに対し、他地域からは、スコットランド優遇に過ぎ不公平ではないかとの不満が上がっている。
スコットランド独立はとりあえず否決されたが、今後、英国は、地方自治、地方分権に関する内政上の課題に、ますます忙殺されることが予想される。覇権国家である米国についての内向き論や衰退論は、あまり信頼に足るものではないが、英国は、それ自体が覇権国であるわけではないので、米国とは同列に論じられないであろう。
元来、アーミテージが長年主張してきたように、米英関係は、日米関係の手本とすべきものであり、日英間で安保協力を推進することにも特別な価値があった。英国は、EUにおいて、対中武器輸出推進論の急先鋒であったフランス等を長年強く牽制してもいた。しかし、今の英国には、そこまでの価値は認められない。とはいえ、通常の友邦の一つとして、安保協力を進めるべきであり、とりわけ、諜報面では英国にはまだまだ学ぶべき点が多いであろうし、武器や武器技術の共同開発のパートナーともなり得る。そして、英仏の安保協力が強化されている時にあって、我が国が英仏両国と2プラス2を持っていることは適切である。(おわり)
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(連載1)スコットランド独立否決は英国の地位低下を止めない
高峰 康修 2014-09-24 13:39
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高峰 康修 2014-09-25 10:29
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