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2014-09-24 13:39

(連載1)スコットランド独立否決は英国の地位低下を止めない

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 9月18日に実施された、スコットランド独立の是非を問う住民投票では、周知の通り、賛成約45パーセントに対し反対約55パーセントという結果となり、独立は否決された。スコットランドが独立すれば、英国の国際的地位は、一気に低下したことであろう。特に、独立派の公約に非核化が含まれていたことから、英国唯一のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)搭載原潜の基地であるクライド海軍基地を失うことが、安全保障上の大きな懸念事項であった。

 ただ、今般のスコットランド独立否決は、英国の国際的地位に対する致命的な一撃を辛うじて食い止めたに過ぎず、英国の凋落自体は、進行がとどまる見通しが立たないと言うべきであろう。
 
 英国が第二次大戦後、大英帝国の崩壊にもかかわらず、国際社会で極めて高い地位を保ち続けることが出来たのは、自由主義、民主主義、人権の擁護を共通の価値とする、米英のいわゆる「特別な関係」が最大の要因である。大西洋同盟は、米英の「特別な関係」を中核とし、英国は、米国と大陸欧州の橋渡し役を務めることで、発言権を保ってきた。
 
 ところが、近年、英国の姿勢は、大きな変化を見せている。2010年は、一つの分水嶺であった。同年、英下院の外交委員会は、米英関係を「特別な関係」と呼ぶのは非現実的であり、英政府は「米英の特別な関係」という表現の使用を控えるべきである、という報告書を採択している。この報告書は、米英関係自体は充実させるよう求めてはいたが、その後の英国の外交・国防政策を見ると、「特別な関係」と呼ぶか否かに関わらず、米英関係は間違いなく弱体化している。同年10月には、キャメロン首相が国防費を4年間で8パーセント削減する方針を示し、11月には、英仏間で、軍事協力を強化し、合同部隊の設置、核実験施設や空母の共有化にまで踏み込んだ、二つの条約が調印された。これらは、大西洋同盟における英国の立場を大きく変更するものである。(つづく)
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