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2014-07-11 17:07

(連載2)W杯 スポーツでなく興行

中村  仁  元全国紙記者
 もうひとり感謝状を贈るべきなのは、ウルグアイのスアレスです。イタリアの選手に背後からかみつき、これはさすがに9試合の出場停止処分を受けました。これは普通の人間ならできない芸当です。これで3度目だそうで、野生を脱し切っていない人間なのかもしれません。試合後、「バランスを崩して相手に倒れ掛かった際にぶつかった」」と言い訳もしていましたね。国際社会を生き抜くには、平気でうそをつけることが必要なのかもしれません。こういう人たちとは、日本人選手は対等に戦えません。とにかくサッカーの正体を分りやすく見せてくれた功績があります。

 今大会の賞金総額は587億円で、前大会に比べ、37%増、優勝チームには35億円、準優勝チーム25億円、一次リーグ(予選)敗退でも8億円、もらえるそうです。優勝すれば、一人あたり2、3億円になりますから、選手は命をかけるのでしょう。怪我などは、そのコスト程度にしか考えていないのかもしれません。勝つことを最優先し、まわりもそれを認め、あおる世界ですね。

 W杯の総収入は約3000億円(放映権料は2000億円)とかいう記事をみかけました。とにかく気の遠くなるようなマネーがふところに入る世界です。それだけ世界中を熱狂の渦に巻き込むから、桁違いのマネーが飛び込んでくるのでしょう。一方、ファンを熱狂させるためには、ルール違反の黙認などは朝飯前でしょう。自国にW杯を招致するにあたっては、億円単位の賄賂が飛び交うという話に事欠きません。FIFA自身も、巨額のマネーに、われを忘れるのでしょう。そうはいっても、基本は躍動するエネルギーであり、人間離れした身体ワザでしょう。それがなければ、ゲームは盛り上がりません。その基本にテレビ受けするいがみ合い、揉めごと、怪我などのショー的要素が絡みます。マネーが誘引になって、選手自身が消耗品になってもいいと、思わせるよう追い込めば成功です。

 主要国はデフレ脱却のためと称して、中央銀行の超金融緩和を通じ、巨額の過剰マネーを市場に送り続けています。めぐりめぐって、サッカー界にバブル・マネーが落ちているのかもしれません。今大会は、マネー・バブルの波及効果も大きかったのではないですか。そいういう意味でも、次元の違うスポーツ論評を今後、期待したいですね。(おわり)
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(連載1)W杯 スポーツでなく興行 中村  仁  2014-07-10 22:09
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(連載2)W杯 スポーツでなく興行  中村  仁  2014-07-11 17:07
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