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2014-01-09 10:33
(連載3)米国のイラン政策への疑問点
河村 洋
外交評論家
技術的な問題とともにイランの戦略的な意図も探らねばならない。イランは第二の北朝鮮になろうとしているのか?英国王立国際問題研究所のパトリシア・ルイス国際安全保障研究部長とフィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラックマン外交主任論説員は、同紙との11月28日のインタビューでそうした見方を否定している。両者は「北朝鮮とは違い、イランではIAEAが核施設に完全にアクセスできる。さらにイランは北朝鮮のように数十年にわたる貧困と孤立に陥る気はない。またイランはNPTからの脱退をほのめかしたことはなかった」と指摘している。
しかし2016年の大統領選挙で共和党の指名を得られる可能性が高い人物の一人であるマルコ・ルビオ上院議員は10月15日付けのUSAトゥデー紙で「イランのウラン濃縮能力は急速に向上し、核兵器と長距離ミサイルの開発に多大な金額を費やしている。厳しい圧力だけがアリ・ハメネイ最高指導者を核交渉のテーブルに引っ張り出したので、イランが核兵器の開発を完全にやめるまで制裁を継続すべきだ」と訴えている。
またイランの体制の性質も重要である。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・ルービン常任研究員が主張するように「イラン政府が国民の生活福祉を革命の理念より上位に置いたことはほとんどない。最高指導者は自らを地上におけるメシアの代理人だと考えている。主権は神に由来する。イラン国民が何を考えているだろうかなど考慮に値しないのだ」という事実を銘記すべきである。合意の内容が厳しいとはいえ、それでもイランが北朝鮮のようになる可能性を忘れてはならない。重要な問題はイランへの制裁を緩和しながら核開発に一定の歯止めをかけるのか、それとも制裁を強化してイランの核保有の可能性の完全排除を目指すのかである。
ロウハニ師は穏健派と思われているが、それでもイランは核搭載可能なミサイルの性能を向上させ、パレスチナ、レバノン、シリア、イラク、ペルシア湾岸、アフガニスタン、パキスタンにまでいたる地政学的な野心を示している。核開発はシーア派の神権政治の輸出という革命の理念と深く相互関連している。彼らは一時的なデタントを利用して後で核計画を推し進める資金を調達するかも知れない。さらにオバマ政権がジュネーブ合意に対する超党派の反対を乗り切れるのかを注視すべきである。これに対処できないようならオバマ政権はこれまで以上に死に体となってしまうだろう。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)米国のイラン政策への疑問点
河村 洋 2014-01-07 18:04
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(連載2)米国のイラン政策への疑問点
河村 洋 2014-01-08 13:50
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(連載3)米国のイラン政策への疑問点
河村 洋 2014-01-09 10:33
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