昨2011年の秋、学生から「ユーロ圏の金融危機についての論文を教えてほしい」「ヨーロッパの金融・経済問題について説明してほしい」という要望が出た。そこで、欧州政策研究センター(Center for European Policy Studies、CEPS)のウェブサイトに掲載されている諸論文を紹介した(http://www.ceps.eu/)。まずは、ダニエル・グロス(Daniel Gross)の短文「なぜヨーロッパは(アメリカより)苦しむことになるのか」(2009年7月)がやはり分かりやすいようだった。本欄で2010年1月11日と2月7日に紹介したように、彼は「金融危機の唯一の震源地はアメリカであったとは言い難い」として、ユーロ圏の住宅価格などの時系列データを提示して、「ドイツでは統一バブル、スペインでは著しい建設バブル(住宅バブルを含む)、他の諸国では住宅バブルがあり、いずれもはじけた」と分析していた。グロスの一連の論文には、ヨーロッパの住宅・建設バブルを分析するものが含まれ、2009年時点で既に将来の金融危機――東欧諸国への国際通貨基金(IMF)介入にとどまらず、ギリシャ危機辺りまで――が予想の範囲内に入っていたことが窺い知られる。正直なところ本欄で以前にこの論文を紹介した時には、タイトルの ‘Why Europe will suffer more’ を「なぜヨーロッパは(アメリカより)苦しむのか」と翻訳したものの、著者は未来形を使っていたので正確ではなかった。