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2011-05-17 06:17
「中東問題」は欧米諸国の二重基準がもたらした
吉田 重信
学徒
5月10日付けの拙論「ビンラーディンについては、欧米寄りでない、より公平な判断を」に対し、5月15日付けで河村洋氏より「テロとの戦いは現代の十字軍ではない」との反論が寄せられたので、やむをえず以下のように再反論せざるをえません。
第一に、河村氏の見解を読んでいると、氏は、中東紛争問題の本質をよく理解せず、まるで「パバロフの犬」のように、親イスラエル、反アラブ的な言説を条件反射的に繰り返している、との印象を強く受けます。
第二に、氏の引用する有識者の説の中には、非欧米人のそれも含まれてはいますが、その非欧米人たちの所説は、すべて欧米よりの偏りをもっています。アラブ諸国のみならず、欧米諸国においても、米国の対中東政策に異を唱える有識者は多数います。「文明の衝突」を表したハンティングトン教授は、「今後の国際紛争は宗教戦争になる」として、米国の対イラク戦争を予測したとして、評価されています。また、米国には、米国の対中東政策を批判するパレスティナ系のザイード教授のような論客が多数いることを忘れるべきではありません。
第三に、現在の「中東問題」は、すべて欧米諸国のダブルスタンダードがもたらしたものです。長い歴史において、キリスト教徒とユダヤ教徒は相争い、最終的にはナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を引き起こしました。その贖罪のために、欧米のキリスト教諸国は、パレスティナ住民とアラブ諸国の利益に反して、イスラエルの建国を容認しました。
第四に、米国は、世界最大の宗教国家であり、しかも政治的、経済的にはユダヤ人勢力によって牛耳られています。米国の対外政策は、大統領の就任式の時と同じく、すべて「神のみ名」によって行われています。広島に原爆を落とした爆撃機には、兵士の良心を和らげるために牧師までもが同乗したと伝えられています。
第五に、小生が一番言いたいことは、米国が十字軍的な宗教戦争を行っている事実ではなく、米国が非人道的な、建て前はともかく正義に反する力任せの政策を行っていることへの批判です。たとえば、今回の米国の行為は、国際法の手続きにも反しています。目下、テロ対策は、日本を含め広く国際的な支持を得ているのに、米国はなぜパキスタンの主権を侵害してまで単独行動におよんだのか不可解です。国連とパキスタン政府の了解を得て行えば、国際協調的行為として容認することが可能でした。また、イラクのサダム・フセンの生け捕りの例にならい、ビンラディンを生け捕りにして、裁判にかける選択もあったのに、無抵抗な彼を殺害したのは、証拠隠滅が目的ではなかったのかと推察されます。また、報道によれは、彼を娘の目の前で、殺害したのは、本人を娘の前で確認するためであったとされており、米国は目的のためなら、残忍極まる行動をする国のように映ります。
最後に、米国の対外政策の偽善性を示す顕著な例は、世界最大の核保有国家でありながら、今頃になって核廃絶のイニシアテヴをとらんとはかる欺瞞性です。今回の行動によって、オバマ大統領は、一旦授与されたノベール平和賞を返上するべきでしょう。
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投稿履歴
オサマ・ビンラディンは犯罪者か、英雄か
伊藤 将憲 2011-05-09 10:30
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ビンラディンについては、欧米寄りでない、より公平な判断を
吉田 重信 2011-05-10 00:47
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「テロとの戦い」は「現代の十字軍」ではない!
河村 洋 2011-05-15 18:42
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「中東問題」は欧米諸国の二重基準がもたらした
吉田 重信 2011-05-17 06:17
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吉田重信氏の反論に反論する
河村 洋 2011-05-19 16:44
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河村洋氏の反論に反論する
吉田 重信 2011-05-21 09:19
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吉田・河村論争を読んで思ったこと
岡田 章一 2011-05-22 11:23
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