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2011-04-23 16:06
(連載)メキシコ湾原油流出事件は再発の可能性がある(1)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
メキシコ湾原油流出事件の一周年目を迎えた4月20日、ホワイトハウスでオバマ大統領は短い演説を行った。周辺環境と数万人に壊滅的な打撃を与えた事故は、現在でも20人による修復作業が続いていること、最近、全区域で漁業が開始できるようになったこと、メキシコ湾の清掃と政府の安全規制に多大な前進があったが、まだ完全とは言えないこと、今後も収穫した海産物の安全性のモニターを継続し、自国でのエネルギー資源を拡大するため、また安全な沖合いでの石油生産を再開するため、新たに厳しい規制を導入していることなどが演説の要点であった。オバマ氏のスピーチは、「厳しい安全基準が確立された」と思わせるような印象を与えたが、現在の実状はまさに失望的なものである。
昨年の4月20日から数ヶ月間続いたメキシコ湾のBP原油流出事故は11名の死者を出し、政府推定で合計約500万バレル(約8億リットル)の原油が流れた。現在でも、壊滅的なダメージを与えた事故の痕跡は厳然と残っている。生物多様性センターの"A Deadly Toll: The Gulf Oil Spill" と題する報告書を要訳すると、「原油で傷つき、または死亡した海洋動物の数は、最低限に概算しても、海亀約6万3000匹、イルカとくじらが約2万6000、海鳥類が約8万2000であることは判明している」と記述している。しかし、政府は死亡した海洋動物の数は報告しているが、洗浄して自然に戻した動物や、無数の魚類や無脊椎動物が病気になり又は死亡した、実際の壊滅的な数字については明らかにされていないようだ。様々な調査団の報告から、メキシコ湾で漏れた原油は、今でも湾岸環境に散在し、また海底に残留していることが知られている。センターは今後も数十年間にわたり、原油流出事故が野生動物に影響を与え続ける事を懸念している。
更に深刻な問題は、オバマ氏の声明とは逆に、注目に値するような安全性の改善が見られないことや、沖合いでの新たな掘削規制が具体化する前に、メキシコ湾の一部沿岸で原油掘削が許可されたため、将来同じ事故が再発する可能性があることだ。昨年の事故に関与したBPを含む当事者らは、訴訟中の現在でも、責任のなすりあいを続けているが、多数の石油会社は、先月から沖合いでの原油掘削作業を再開した。4月21日の『ニューヨーク・タイムス』紙によると、オマバ政権は以前メキシコ湾の東部と大西洋沿岸の沖合いで原油掘削の拡大を提案していた方針を12月にキャンセルし、今後少なくとも7年間、より強固な安全性と環境基準が設定されるまで掘削を禁止することに決定した。この点では「より厳しい措置」が導入されたとも思えるが、メキシコ湾の中央部および西部沿岸では「新たな安全手段の下」に掘削が開始され、今後も続く模様である。
しかし、4月17日の "Associated Press(AP)" によれば、高いリスクを伴う事故に関する技術分野の専門家として知られるイエール大学のチャールス・ペロウ教授は「将来の大規模な事故に備えた十分な対策が施されている証拠はなく、流出事故を防ぐため企業体制を変える十分な方法が模索されているとは思わない」と述べたと報じられている。ペロウ教授は、「多くの点で、重大な原油漏れは避けられない可能性がある。今後5年間で少なくとも1回は大きな事故が発生する可能性がある。経費削減と労働者へのプレッシャーが原因による事故が発生するかもしれない」と、安全性よりも利益を優先している企業の体質を警告している。(つづく)
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