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2010-08-01 00:35
(連載)オバマ外交で脆弱化する世界の安全保障(4)
河村 洋
親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
アメリカの本土防衛も重要である。今年の2月にはディック・チェイニー前副大統領とコーリン・パウエル元国務長官の間でオバマ氏の国家安全保障政策をめぐって激しい議論があった。チェイニー氏は、オバマ氏がグアンタナモ収容所を閉鎖し、デトロイトでクリスマス爆弾テロを計画したナイジェリア人のハリド・シーク・モハメドを一般犯罪者として起訴したことを非難した。チェイニー氏は「オバマ外交によってアメリカの安全が脅かされている」と言う。さらに、チェイニー氏の娘のリズ・チェイニー氏は、ジョセフ・バイデン副大統領がディック・チェイニー氏を非難したことに厳しく反論した。リズ・チェイニー氏は、オバマ政権がアル・カイダによる核および生物化学兵器の入手の脅威を軽く見ていると主張する。
CBSの「フェース・ザ・ネーション」という番組に出演したコーリン・パウエル氏は、ブッシュ政権が設立した機関は、オバマ政権でもよく機能し、アメリカの安全は脅かされていないと述べた。いずれにせよ、パウエル氏はディック・チェイニー氏との論争で「アメリカの安全保障は悪化していない」と言っただけで、「改善した」とは言っていない。
オバマ政権の外交政策をどのように評価すべきだろうか?ロバート・ケーガン氏は、リベラル派の間でオバマ外交が過大評価されていることに対して、注意深く論評している。「オバマ氏は、冷戦後の政策から離れてしまうという致命的な誤りを犯した。バラク・オバマ氏は、ラーム・エマニュエル大統領首席補佐官が言うように実利的なリアリストにすぎないのかも知れない。問題は、オバマ氏が権威主義体制との協調によってアメリカの国益が達成されると信じていることである。オバマ政権は、アメリカ後の世界を何のためらいもなく受け入れ、危険な風潮を跳ね返そうという気は余りない」と論評している。
ケーガン氏は、さらに「オバマ氏は、自由主義世界秩序に対抗しようという勢力と互恵的な関係を模索しようとしているが、相手はゼロ・サムの原則で応じている」と述べている。旧ソ連地域でのロシア、アジア太平洋地域での中国といった大国が地政学的な挑戦を突きつけているのは、典型的な例である。覇権安定論の観点からすると、オバマ氏の平和主義は世界の安全を損なっている。オバマ氏は、パックス・アメリカーナが自由主義世界秩序を強化してゆくための公共財であることを理解する必要がある。(つづく)
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