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2010-07-31 10:51
(連載)オバマ外交で脆弱化する世界の安全保障(3)
河村 洋
親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
中国との関係は微妙である。米中双方とも金融危機以降の世界経済の運営での協調の強化を模索しているが、両国関係の改善には人権、チベット、台湾といった問題が依然として障害となっている。司会のラスティグ氏は、オックスフォード大学のスティーブ・ツァン教授の発言を引用し、「中国政府にとってオバマ氏の対中政策はブッシュ氏の政策より見通しを立てにくい」と述べた。これに対してカーネギー国際平和財団のダグラス・パール副所長は、「オバマ氏はブッシュ政権の対中政策を土台にすると決意した」と応えた。しかしパール氏は中国がオバマ氏の姿勢をよくわかっていないことは憂慮していた。中国がアメリカを挑発してオバマ氏が弱いかどうかを試すことも考えられるので、パール氏の懸念は理解できる。カーネギー・BBC共催イベントではアメリカ外交の差し迫った課題を理解するうえで重要な視点および論点が展開されている。
核不拡散に関して、オバマ大統領は4月12日から13日にかけてワシントンで第1回核セキュリティー・サミットを主催し、それはメディアと知識人から大いに注目された。中にはオバマ氏を「核なき世界」に向けた救世主だと称賛する者までいる。カーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副所長は、「保守派も、リベラル派も、プラハ演説の骨子を誤解している」と指摘する。パーコビッチ氏は以下の3点が重要だと言う。それは(1)「核なき世界」ははるかに安全であること、(2)それを実現することは難しいこと、そして(3)核兵器が存在する限り、アメリカは自国本土と同盟国を守るために核抑止力を維持するということである。
オバマ大統領はNGOや著名人を招待して「核兵器全廃」合意の署名を見せつけたが、核廃棄の実現性や多国間交渉のスケジュールに関しては言及していない。左翼はオバマ氏の呼びかけがアメリカの国益まで犠牲にした画期的なものだと理解している。他方でオバマ氏に批判的な勢力は一方的な核軍縮を警戒している。ジェームズ・シュレジンジャー元国防長官、ジョン・カイル上院議員、リチャード・パール氏らは、オバマ氏の呼びかけを「夢想的だ」と批判する。
実際にはオバマ氏は、4月の核サミットに参加した47ヶ国を全て含めた新しい核不拡散体制を作ろうとしている。ジョージ・パーコビッチ氏は「オバマ氏の主張を正しく理解しないと、諸外国の首脳達が新しい核不拡散体制に参加するうえで障害になるばかりか、どこかの国が核実験を行なう危険性も高まる」と結論づけている。他の問題と同様に、私は全世界の左翼に広がる「救世主オバマ」という誤ったイメージによってアメリカと自由主義同盟諸国の安全保障が脅かされると強調したい。(つづく)
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