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2009-08-26 09:54
(連載)地方分権のあり方を考える(1)
水野 勝康
特定社会保険労務士
首長連合が各党の政策を点検し、地方分権について点数をつけるということが行われた。2009年8月30日投票の第45回総選挙では、地方分権にどのように取り組むのかについて、各党とも知恵を絞っているようだ。少なくとも、二大政党は地方分権を推進する立場を取っている。しかし、その内容は自民党と民主党では異なる。自民党は道州制推進を掲げている。この点では分かりやすい。しかし、どのような目的で道州制を導入したいのか、今ひとつはっきりしないところがある。一方の民主党は、地域主権という理念を掲げている。しかし、この理念をどのように実現するのかについては、曖昧模糊としている。
そもそも、「地方」が「主権」を持つということ自体、どのようなものなのか、はっきりしない。「主権」とは、国際法で用いられる概念である。その内容については、国際法の世界でも不明確であり、統一的な定義を下すことは困難である。一般的には、国家の最高独立性を表す概念と理解されているが、地方自治体が国家の最高独立性を有するということになると、国との関係がどうなるのかという問題が残る。1648年のウェストファリア条約は神聖ローマ帝国を事実上解体して領邦君主による連合体とし、神聖ローマ帝国に属する各領邦国家はそれぞれ独立した主権国家となった。現在の「地方」が「主権」を持つということになると、ウェストファリア条約のように日本を「解体」することが考えられる。
民主党は「主権をアジア諸国に譲渡し、共有する」という考えを掲げていたことがあり、国の主権をどのように捉えているのかそもそも理解し難かったのだが、「地方主権」という言葉も、意味がよく分からないところがある。なお、国際法では、中央政府を解体して地方に主権を与えることも、主権を他国に譲渡することも有効である。チェコスロバキアは中央政府を解体して、チェコとスロバキアに国を分けた。主権を他国に譲渡している例としては、スイスに外交・安全保障を委託しているリヒテンシュタイン候国や同じくフランスに委託しているモナコ公国がある。
リヒテンシュタイン候国もモナコ公国も、外国に外交を委託しているとは言っても、国際社会から一国として扱われているが、かつてはそうではなかった。いわゆる「属国」「保護国」というものがある。日本は、韓国を保護国にして、後に自国に編入した。韓国では日韓併合は武力をちらつかせて行われたものであるから無効であると主張されることがあるが、威嚇によって主権を放棄させることが国際法上違法とされるようになったのは、第二次世界大戦以降のことである。日本が「自殺」することは可能ではあるし、民主党の「地域主権」などという言葉を聞いていると、自殺するのかと思ってしまうが、ここでは「地方に大々的に権限を委譲する」という好意的な解釈をして、筆を進めることにする。(つづく)
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