外交円卓懇談会
第154回外交円卓懇談会
「東南アジアに対する韓国の『新南方政策』」(メモ)
グローバル・フォーラム
公益財団法人日本国際フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局
グローバル・フォーラム等3団体の共催する第154回外交円卓懇談会は、チョウ・ウォンギ(Wongi CHOE)韓国国立外交院安全保障研究所ASEANインド研究センター長を講師に迎え、「東南アジアに対する韓国の『新南方政策』」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2019年5月13日(月)15:00~16:30
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「東南アジアに対する韓国の『新南方政策』」
4.報告者:チョウ・ウォンギ(Wongi CHOE)韓国国立外交院安全保障研究所ASEANインド研究センター長
5.出席者:14名
6.講師講話概要
チョウ・ウォンギ(Wongi CHOE)韓国国立外交院安全保障研究所ASEANインド研究センター長の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。
(1)韓国の外交政策の特徴
韓国文在寅政権にとって最も重要な外交政策は、北朝鮮の非核化および北朝鮮との和解を含めた朝鮮半島の和平プロセスであることはいうまでもない。他方で、もう一つの重要な外交政策として取り上げられているのが、「新南方政策」と「新北方政策」である。韓国では、5年1期の大統領制のため、5年ごとに政権が変わり、またその外交政策の名称も大きく変わる。ただしこれはあくまでも名称の変化であることが多い。前朴槿恵政権では、「ユーラシア・イニシアチブ」と呼ばれる対ロシアおよび中央アジアへの外交・経済関係の強化を目指した政策がとられていた。現政権の「新北方政策」は、基本的にこの「ユーラシア・イニシアチブ」を踏襲するものである。同じく「新南方政策」も前政権で実施されていたインドを含めた東南アジアへの関与政策を踏襲するものである。
(2)「新南方政策」が目指すもの
文在寅政権が提唱する「新南方政策」は、世界で最も急速な発展をみせているインドを含む東南アジアに対して、これまで韓国は二次的関係しか築いていなかったため、今後、同地域との経済関係を強化しようとするものであり、主に次のような側面からなる。一つ目は、外に向かった経済政策という側面であり、2017年のTHAAD配備に対して受けた中国からの経済制裁を教訓にして、これまで以上に外部との経済関係を多角化しようとするものである。二つ目は、外交政策におけるリバランスの側面であり、これまで北対北朝鮮および同地域を取り巻く米国、中国、ロシア、日本の4大国にばかり傾注した外交政策をとっていたものを、他の地域に拡大しようとするものである。ASEANは、今や韓国の1.5倍のGDPに達し、またASEANが中心となって、毎年東アジアサミット(EAS)、ASEAN+3首脳会議などの政治イベントが開催されている。これまでの4大国だけでなく、このような影響力をもつASEANとの外交・経済関係を拡大しようとしているのである。三つ目は、地域協力あるいは地域戦略の側面である。多国間枠組みに積極的に参加することで、特定の大国からの圧力などを避けるようとするものである。
韓国は、盧武鉉政権時代に、大国間政治の「バランサー」の役割を目指したが、恒久的な立場を得ることはできなかった。文在寅政権が目指しているのはバランスの取れた外交政策をとることであり、韓国を取り巻く国際情勢から、必要な政策であろう。
(文責在事務局)