ある英単語が気になってならない。「シェパード(shepherd)」である。言うまでもなく、羊飼い、牧羊者のことであり、喩えて牧師、指導者の意味で用いられている。大文字の「the Good Shepherd」はどこかの「羊飼い」のニックネームではなく、「イエス・キリスト」その人を指す。その名の教会が多いのは当然である。同名の映画が、ロバート・デ・ニーロ監督で昨年公開されたのも記憶に新しい。映画では、「神のように万能なCIA」という暗喩で用いられており、「CIAにtheがつかないのは、神にはtheが付かないからだ」という台詞もある。つまり、theのついたタイトルは「神ではないヒト」ということなのかもしれないが、含意は複雑だ。類語辞典(Roget’s Thesaurus of English words & phrases)のshepherdの項には、bring together; herdsman; protector; direct; leader; servant; pastorなどが並ぶ。ちなみに、shepherd’s dogは牧羊犬(sheepdog)で、日本のシェパード犬(German shepherd dog)とは同意でない(『ジーニアス英和辞典』及び『オックスフォード現代英英辞典(Oxford Advanced Learner’s Dictionary of Current English)』)。